進撃 第壱扉 [dream]

□お迎え
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「今日の訓練はここまで。解散!」

今日は訓練所から病院へ行く日だ。
マヤが用意するという馬車で。

訓練と片づけを終え入口に向かうと、白衣を着たマヤが見えた。
メガネもマスクもしていないが、すぐに分かった。

しかしマヤは一人ではなかった。
年下の兵員数名がマヤと親しげに話していた。

「お前だったのか、兵長の怪我の担当は。」
「じゃあ思ったより復帰は早いかもしれないね。」
「そんな、買いかぶり過ぎだよ...あ。」

目が合うとマヤは律義に、丁寧なお辞儀をした。
他の団員もリヴァイに気付き、「お疲れ様です!」と敬礼する。

「お疲れ様でした。どうぞお乗りください。」

マヤが馬車の扉をあけたので、リヴァイは団員達を労い、乗り込んだ。

「じゃあ、また。」
「今度飲み行こうな。」
「うん。」

そんな挨拶を交わしマヤ達は別れる。

あいつらとはどういう関係なんだ?
マヤが乗り込んできたら聞こうと思っていたら、馬車が走り出した。

「お前が馬引くのかよ。」

不満をボソッと漏らしたつもりが、外のマヤに聞こえていた。

「はい、乗り心地どうでしょうか。上等なの選んできたつもりなんですが。」
「馬車は悪くない。道が悪い。」
「えー...すいません、ご辛抱下さい。」

初めて見たマヤの素顔。
マスクで隠れていた頬と唇は微かに薔薇色をしていて、若いというより幼いという印象だ。
瞳の色は少しだけ薄い。

馬車で面と向かって座っていたらじっと見てしまったかもしれなかった。

「この馬、老馬なんですけど、調査兵団で引退した子なんですよ。調査兵団の馬はみんないい子なので、馬車には重宝するんです。」

マヤが話しはじめたので、適当に相槌を打つ。

「及ばずながら馬とか家畜も診ることがありまして。兵団に入れる仔馬を育てたりもさせてもらってるんです。」

マヤの話を聞いていて、会ってから感じていた違和感が何なのか、この時気づいた。

いつも困ったような表情で人と話すマヤ。
自分を貶めるような発言をするマヤ。
常に自分を底辺に置いて物事を見るマヤ。

「チッ、気持ち悪ぃ。」

少し病的なマヤのその性格。
なぜかそれを心配する自分。
両方に対しては悪態をついた。

クソ。
本当に、調子が狂う。

「何かおっしゃいましたか?あ、もうすぐ着きますので!」
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