進撃 第壱扉 [dream]
□病院での出会い
1ページ/3ページ
「筋肉組織が大いに損傷しています。捻挫などというレベルではありませんな。」
先日の壁外遠征で負傷した身体について、リヴァイは兵団の病院で医師団からの診察を受けていた。
医師団と言っても、部屋にいるのは二人だけである。
初老で髭面の、おそらくはかなり役職も経験も積んでいる医師。
それから助手なのか、髭面の診察を後ろから見ている、ひょろりとしたメガネ。歳はリヴァイより少し若いくらいだろうか。
二人とも診察中なのでマスクをしている。
「これだけ筋肉がボロボロなのに骨には異常がなさそうなのは、さすがといったところでしょうか。」
「治るのにどれ位かかる。」
リヴァイは単刀直入に聞いた。
「普通は安静に加えリハビリで、一か月で普通の訓練などに戻れるといったところでしょうな。あなたは色々な意味で特別ですから、今後も私とこの者が担当いたします。治療は今すぐ始めてよろしいですね?」
「言うまでもない。」
リヴァイが答えると、髭面とメガネは宜しくと言うように頭を下げた。
そしてメガネがリヴァイの手足を取り、注意深く触り始めた。
することがないので何気なくメガネの触診の様子を見て、ハッとした。
...何だか艶かしい手をしている。
リヴァイの手足を調べ上げているその手は、繊細で白くしなやかで、しかし指一本一本が蠢いているようだ。
その指に太腿を触られていることに少しだけ快感を覚えた自分を制したのと、触診が終わったのは同じ頃だった。
...ったく、男に欲情したのか俺は。
触診を終えたメガネは、カルテを見ながら髭面に何か説明している。髭面が頷いた。
「ではこれから処置を行います。真直ぐに座って、肘掛をしっかりとにぎって下され。」
「別にこのままでいいだろう。」
「貴方でもおそらく、少々お痛みが。」
「問題ない。」
「...では。」
メガネがリヴァイの足元にひざまずく。
そしてさっきの指で、リヴァイの足の筋肉から、処置の場所を探した。
今度はその指の感触を意識しないよう努めていた。その時だ。
「では、失礼いたします!」
リヴァイは耳を疑った。
女?
その驚きと困惑も、次の瞬間に訪れた、全身を貫くような激痛によってかき消された。
「...っ!!」
「も、申し訳ありません!多少の痛みは問題ないと...」
「さすがのあなたでも堪えましたかな。内緒ですが、失禁する患者もいるほどです。」
幸いそこまでの失態は晒していないが、声が出ない。
「あのう、続けても宜しいでしょうか。お辛いと思いますがなるべく時間を置かずに処置をしないと効果が。」
「...早く、終わらせろ。」
リヴァイはかろうじてそう言った。
「では。」
ニコリと笑ってメガネは一つまた一つと痛んでいる筋肉を見つけていく。
その笑顔に魅力を感じたのかもしれないが、その後畳み掛ける激痛でそれどころではなくなった。