執事たちの恋愛事情

□あなただけを見つめる
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連日の猛暑が嘘のように、爽やかで涼しい日のことだった。

比較的柔らかな日差しは、きらきらと濡れた草花を照らしている。

それらに囲まれた東屋に小走りで近づくと、僕に背中を向けたままの背中は浅く上下していた。

「お嬢様?」

ステップを登って東屋がつくる影をくぐり、お嬢様に近づくと、すやすやという寝息が聞こえてきた。

膝に乗せたままの本がはらりと風でめくれる。

僕はそれをそっと膝の上から取り上げ、しおりを挟むとその横に置いた。

長いまつげに縁どられた目がゆっくりと開く。

僕が慌てて、起こしてしまったことを謝罪するとお嬢様はふわりと笑って「そろそろお茶の時間だし、ちょうど良かったわ」と言った。



白い傘をさしたお嬢様の後ろを歩く。
傘はご機嫌そうに揺れてお嬢様に影を作る。

もうすぐお屋敷、というところで隆也さんに会った。
いつもよりいっそう焼けた肌からこぼれる白い歯とたくましい腕が羨ましく思える。
それとは対照的な僕は自身を見下ろしてからまた隆也さんと話すお嬢様を見る。

やっぱり女の子は隆也さんみたいな人がいいのかと、珍しくネガティブな気持ちになった。

「瞬くん?」

「…あ、はい!」

「どうした瞬、ぼうっとして。大丈夫か?」

「すみません。大丈夫です。」

暗い気持ちを吹き飛ばすように僕は笑った。

「隆也くん、この向日葵部屋に飾っていい?」

「もちろんですよ。どれがいいですか?切りますよ。」

「ありがとう!……じゃあこれ」

お嬢様が指をさしたのは、他の物より小ぶりな向日葵だった。

「このちっこいやつでいいんですか?」

遠慮しないでという隆也さんにお嬢様は首を振る。柔らかなブラウンの髪型揺れて光る。

「それがいいの。それになんだかこの向日葵、瞬くんに似ている。ずっとこっちを見ていてくれたし。」

隆也さんがその向日葵を切って僕が受け取る。確かに小ぶりだけど、ぴんとしていて立派だった。



「お嬢さん、向日葵の花言葉知ってます?」

「何?知らないわ」

「瞬みたいですよ」

「…僕も自分はお嬢様の向日葵だって思います」

「えっ、教えてよー」

僕は返事をする代わりにまた笑顔を向けた。


向日葵の花言葉は


あなただけをみつめる

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