執事たちの恋愛事情
□スノードロップ
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東屋の付近に植えたスノードロップが咲いた。
その名のとおり雪のしずくのような、白くて小さな、かわいらしい花を咲かせている。
可憐ではかない感じのする草花だが、雪の中からも芽を出すほどたくましい植物だ。
…ちょっとお嬢さんに似てる気かがした。
八重咲きの品種もあり、何株もまとめて植えたのでなかなか見ごたえがある。
その中の一つにそっと触れてみた。
白い小さな花はふっと少し揺れて笑っているように見えた。
「隆也くん?なにしてるの?」
「あ、お嬢さん!」
白いカーディガンを羽織ったお嬢さんがこちらに近づいてきた。
「わああぁ…とってもかわいい!」
スノードロップに気がつくと予想通りの歓声をあげてくれたお嬢さんがふわりと笑う。
白い小さな花が風に揺れた。
「スノードロップって言うんですよ。名前もいいでしょ?」
「本当ね。素敵な名前。」
「この花ね、お嬢さんに似てるって思いますよ。」
お嬢さんは困ったように「私はこんなふうにおしとやかで可憐じゃない」と否定した。
また、ふわっと風が吹いて白い花達が笑った。
…それだけじゃないんですよ。この白い花とお嬢さんの魅力は。