執事たちの恋愛事情

□なんでも知りたい
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ー古手川の見る景色ー


「それでは、行ってらっしゃいませ。」

「うん。またねっ。」

お嬢様を教室まで送り届ける。

ーー…さて、お屋敷に戻るか。

僕も、だんだん執事としての生活に慣れてき た。
その、お嬢様と恋人になっても仕事とちゃんと割り切っている。

僕としては、うまくやれてるはずだ。


「古手川」

「はい」

お屋敷に戻った僕は、すぐに中岡さんに引き 止められた。

「お嬢様の時間割は覚えいるかい?」

「ええ。もちろん。」

「数学は何限目?」

「えーと、3限目です。」

どうやら、お嬢様は昨日サロンで勉強したま ま数学のプリントをお忘れになったようだ。

…届けなきゃ。
僕はもう一度白凛学園へ向かった。






「あ、瞬くんっ。どうしたの?」
僕が来るなりひょこひょこと近寄ってくるお嬢様。

「数学のプリントをお忘れではないですか?」

「あ…!ありがとう!!あぶなかったぁ〜」

「お役に立てて良かったです。」

「うん!ありがと」

喜んでくれているみたいだ。


「そちらは?可愛らしいわね」
次々とやってくるお嬢様のお友達。

「私の執事なの。」

「可愛らしい」

「羨ましいわ」

みんなが口々に語る。

えーと、こういう時は…

「お褒めに預かり光栄です」

「お若いのにしつかりなさっているのね。素敵な方だわ。」
お嬢様の隣にいることを肯定されるようで、嬉しかった。

そして、チャイムが鳴る。

「あ、それではお嬢様、また後ほどお迎えに あがります」

「……。」

あれ? どうかしたのかな…?



それから、お迎えにあがったときも、お嬢様 は僕に一言も口を聞いてくれなかった。

「お嬢様、お茶をお持ちしました。今日のお 茶は…」

お嬢様のほっぺが膨れている。
怒って…いる?

不謹慎かもしれないけどちょっと…可愛い。

持ってきたティーセットを、テーブルに置い た。

「お嬢様」

「……。」

膨れたほっぺを突っついてみる。

「ねぇ、どうしたの?」

「別にっ」

「別にって、怒っているでしょう?」

「…。」

「言ってください。僕は好きな人のこと、 なんだって知りたいんです。」


膨れているほっぺがしぼんだ。

「瞬くんは…」

「はい?」

「瞬くんは、可愛いってクラスの女の子たち に言われて嬉しかった?」

「えっ?」

「…でれでれしち ゃってさ」

ふんっ…、と首を背ける。
予想外の言葉に驚いていた。



「…僕は男の子です」

「…うん。」

「可愛いって言われて嬉しくはないですよ? 」

「…。」

「どうせならかっこいいとか頼もしいとか言 われたいです。」

「…瞬くんは、頼もしいし…かっこいいよっ…」

そういってまた、首を背けてしまった。
今のは照れ隠しだろう。

顔を両手で覆い、こちらに向かせる と、そのまま隣に座った。

…柔らかで滑らかで透き通る赤い頬。


「僕はお嬢様ものです。安心してください 。僕が頬を染めたりするのは、お嬢様だけで すよ…」

「ありがとう…」

笑ったのを確認すると、やさしく、でもありったけの思いを込めて口 づけした。

唇をはなすと、お互いに笑いあって、僕は執 事モードに戻る。

「お嬢様、お茶がさめてしまいました。今、 入れ直しますね。」

「ありがとう」



貴女だけですよ。

こんなに大切な人…。

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