故に、私は恋をする
□スローリー・ア・テンポ
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「お疲れ様でした」
お茶の入ったペットボトルを渡され、スタッフさんからは良かったよの一言をたくさん頂いた。
失敗しないか心配だったけど、なんとかベストを尽くすことができた。
このまま頑張っていけたらいいな。
とりあえず今日はもう予定はないし、あとは帰るだけ。
「お疲れ様っ、Shinoちゃん」
「あ、林檎...」
私を待っていたのは、控え室の前で壁に背を預けて立つ彼女...いや、彼?
「今日も良かったわ。相変わらずきれいな声ね、羨ましいわ〜」
「ありがとう。中、入る?」
ドアノブを引いて振り返れば、少しだけ困った表情をした林檎が、私の後に控え室に入った。
「待ってたってことは、私に何か話が?」
「そうなの。シャイニーから頼まれてね」
備え付けられていたお茶を二人分注いで畳に座る。
可愛らしく両手を合わせて語り出した林檎に、私は自然と笑みが零れた。