故に、私は恋をする

□スローリー・ア・テンポ
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「Shinoさーん、スタンバイお願いしまーす!」


「はい!」





 白や黒を基調とした煌びやかな衣装を身に纏い、ふぅと深呼吸。



6年経っても、このどうしようもない緊張感には慣れなくて、僅かに震える手を握ったり開いたり。







「4月に入ってからの初ライブ。がんばってね、Shinoちゃんっ!」


「あ、ありがと林檎」


「あらあら、緊張しちゃって。すっごく可愛いわ〜」


「お世辞はいいですよ」









本気でそう思ってるのに〜!
ふわふわにセットされたピンク色の髪を揺らしながら頬を膨らます同期の彼女に今度は溜め息。


 林檎のほうが全然可愛いのに。
それに美少女の姿をした彼女の真の姿は″彼″、つまりは男だ。



 そんな彼に女の子として負けてる私って......考えるのやめよ。





本番前から心が折れそうになりながらも、ステージの向こう側に意識を向ける。







「いってきます」


「ん、いってらっしゃいShinoちゃん」






 ほんの一瞬だけ、男の人の優しい笑みを見せた林檎に背を押され、私はスタッフからマイクを受け取った。







ゆったりとしたBGM










〈......Are you ready...?〉











一瞬の静寂が、歓喜に変わる。









LEVEL1 スローリー・ア・テンポ







(いつだって応援してるよ)
(君は俺の大事な子だからね)





 
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