フォレストノベル

□夜闇の住人
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ここはホストクラブ『blue rose』。歌舞伎町でもかなり有名なホストクラブだ。
僕がこんな仕事を始めた理由はいたって単純。母さんも姉さんたちも水商売だから、僕も同じ道を選んだ。ただそれだけ。
僕は母さんに似て、少し子供っぽい顔をしている。昔はこれがコンプレックスだったけど、今はこれが売り物だ。

「待たせてごめんね、幸恵さん。でも僕、幸恵さんが来てくれるのずっと待ってたんだよ」

待たせた客に対して、少し子供っぽく、拗ねた言い回しをして、抱きつく。これが20代後半から30代の女性にウケる。母性本能を擽るらしい。
僕みたいな若いホストは経験がない分、こういうのでポイントを稼がなきゃ生き残れない。

「ふふ、ハヅキ君は相変わらず可愛いわねぇ」

僕にとって一番の上客、幸恵さんは笑みを浮かべて僕を抱き返してくる。
幸恵さんは水商売をしているだけあって、母さんに似てる。母さんよりは若いけど、雰囲気が近い。
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