フォレストノベル
□夜闇の住人
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入り口に掲げられた写真を彩るように、白いカサブランカの花が飾られている。
その強すぎる匂いにくらくらしながら、僕は淡いブルーの間接照明に彩られた店内へ足を踏み入れた。
「おはよう、ハヅキ君」
「おはようございます、オーナー」
カウンターに立つオーナーに笑みを向けて、僕は写真の前のカサブランカを指差す。
「オーナー、あれ、抜きません?匂いがきつすぎて、お客さんの香水の匂いわかんなくなりますよ」
「え……ああ、そうか。ハヅキ君は細かいところによく気づくね」
僕の言葉に頷いて、オーナーはカサブランカを抜くように指示を出す。
……もっともらしいこと言ったけど、実際は僕が匂いの強い花が嫌いなだけ。ナンバー2の座って結構すごいものなんだなあってたった今自覚した。
「ハヅキ君、指名入ってるから。支度してきて」
片付けられるカサブランカを見ていたら、そんな風に声が掛けられる。僕はにっこりと笑って、頷いた。
「はーい」