フォレストノベル
□Sweet Sweet Bathroom
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洗い場だけでも3畳ほどの広さがあり、浴槽に至っては大人2人が余裕で入れる大きさを持っていた。
身長180センチの青司にとってはありがたいことだ。
そんな、古いけれど広々としたこの風呂場では、もともと小柄で華奢な女はますます小さく所在なさそうに見えた。
「…それで?」
先に沈黙を破ったのは青司の方だった。
女は青司の顔色を窺いながら恐る恐ると言った感じで口を開いた。
『あの…驚かないで…いえ、怒らないで聞いてくださいね』
女の様子があまりにも不安そうで見ていて気の毒だったので、とりあえず青司は頷いてやった。
それを見た女は少しだけホッとして顔を上げ、自分より20センチは背の高い青司を見上げながら一息にこう言った。
『私、幽霊なんです』
……
……
青司には答えるべき言葉がみつからない。
もともと人づきあいが苦手でぶっきらぼうな質なのだ。
ボキャブラリーの貧困さにかけては誰にも負けない自信があった。
すると女の方がたまらなくなって言った。
『…あの、ごめんなさい…』