A-BOUT

□いざ、敵討ちへ
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ピコピコ...ピコピコ...

「オナカガ、スキマシタ」

ピコピコ...ピコピコ....


『ねぇ....柾木くん。学校は?』

「今日はサボり」

「今日は....じゃなくて今日も、だろ」

『いや、人のこと言えないからね?砂原くん』


制服姿でソファーに寝転がりながらDSをピコピコといじる柾木くんと、同じくソファーに座りながら雑誌を見ている砂原くん。

平日の朝です、おはようございます。
なぜ彼らがいるかといいますと....


数十分前────


『洗濯よし、掃除機終わり、あとはお風呂掃除と....』


今日は急ぎの仕事もなかったため、ゆっくり家事をこなしていたのだけど。


『ん?携帯なってる?....柾木くんだ。もしもし?どしたのー?』

「俺だけど....今なにしてんだ?」

『え?掃除とか雑用だけど...なんで?』

ピンポーン

『あ、ごめん。ちょっと待って、インターホン鳴った..........あぁん?』


荷物かな?とモニターを確認すると、そこには半袖のカッターシャツ姿の.....目つきの悪い男の子が2人が映っている。

ピッ

『.......はい』

「宅配便でーす」

『.......なんでやねん』


なんでここにいるんだろう。

とりあえず他の住民の迷惑にならないよう、ロックを解除し自動ドアを開けた。


ピンポーン

『....今開けます』


何をしに来たのか、なんとなく想像はつくけど。
でももしかしたら学校で何かあったのかもしれない。

少しの不安を感じつつ、私は玄関のドアをガチャっと開けた。


『....おはよ』

「よぉ、名無しさん。邪魔するぜー」

「悪いな.....朝から」

『別にこっちは大丈夫だけど....』


柾木くんの手にはDS。
砂原くんの手には雑誌。

心配して損した。
完全にまったりする気だ。


『とりあえず入りなよ。コーヒー飲む?』

「「飲む」」


こうして朝から砂原くんと柾木くんが我が家にいるわけなんですが。。。


『サボるな!とは言わないけど、出席日数とか大丈夫なのー?』

「知らねー」

『テストとか....あるの?』

「あぁ、一応あるぜ」

『へーー、そうなんだ....』


あることにはあるのね。
まぁこの二人がテスト勉強してる姿とか....想像できないけど。


『ま、留年しない程度にしなよ?』

「大丈夫だって。なぁ砂原?それより名無しさん、いつもと雰囲気違うな」

『......突然来るから部屋着のままなんだってば』

「いいじゃねえかよ、俺はこっちが好きだぜ?」

『ぇ......。』


サラっと言ったよ、この人。
砂原くんを見ると雑誌に目を向けたまま、シレッとしていた。

話を振った柾木くんの方がびっくりしている。


なんと返していいのかわからず、私は何もなかったように家事を続けた。





『そうだ!砂原くんにお願いがあるんだった!』

「....あ?」

家事が一段落した頃、私はあるお願いがあったことを思い出した。


『ハイキック....あれどうやってんのか教えて欲しいの』

「「あァ??」」

『なんかね、足をこうやってあげるでしょ?そうすると.....ほら、グラッてなっちゃってインパクトが弱くなるっていうか....』

「なっ、なにやってんだよ....ッ!」

『いやほら.....護身術的な?』

「名無しさん、今さら覚えなくても戦えるだろ」

『......もう無理だよー。ハイキック決まるとスカッとするじゃん?手よりも痛くないし!』

「「..........。」」

『だめ?』

「まぁ.....少しなら.....」

『やった!じゃあこっちで教えて?』


砂原くんはあまり乗り気では無さそうだったけど、ゆっくり立ち上がり私の前にきてくれた。


『えーっと...こう?』

「いや、もっとこんな感じだ」

『でもこうすると....わっ...と!』


砂原くんみたいに決まらない。
どうしてもフラついてしまう私をそっと背後から支えてくれる。


「軸足が....こう」

『なるほど.....こう??』

「よくわかんねぇな....なんとなくだよ、なんとなく」

『それじゃわかんないってばーー!』


喧嘩の最中だからきっと無意識に出来てるんだろうね。
それを説明しろっていうのも無理なのかもしれない。
だけど砂原くんは意外にも丁寧に教えてくれた。


「だから....こうだよ!」

『わっ...!よく上がるよねー、足』

「まぁな.....ほら、やってみろ」

『よっ....!どう?』

「おっ、いいんじゃねえか?」

『ほんと?よし、じゃあちょっとアレ持ってくる』

「「アレ??」」


マガジンを読みながらチラチラずっとこっちの様子を伺っている柾木くん。
一緒にやればいいのに。


私は荷物置き場にしている部屋からパンチバッグを運んできた。
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