ブルースター
□09
1ページ/3ページ
『はぁ…はぁ…今、空が光った…?』
マ「良くないことが起こる…血をこぼしたような暁だ。」
AKUMAがどこかへと向かい先頭も少し落ち着いた頃、船の上で戦っていたウィリアたちは赤く染まった空の方向を向き何か光ったことに気づいた。
【 09 】
『…嫌な予感がする…。』
アニ「ウィリア様…?」
『あ、ううん。なんでもない。
それよりみんなの傷を治さないとね?』
光った空の方をじっと見つめながらぼそりとつぶやいたウィリアを不思議に思ったアニタは彼女の名前を読んだ。
ウィリアはアニタに名前を呼ばれたことによりはっと我に戻りなんでもないと否定し、閉じていたイノセンスの本を開いた。
『イノセンス発動。怪我してる人の傷、治してあげてキュアン。』
ウィリアのイノセンスが光ったと思えばそこから現れたのは小さなウサギ。
キュアンと呼ばれたウサギはウィリアの言葉に頷いたあと彼女の周りを軽く一周してから怪我をしている人に近づいた。
ブ「ウィリア、あのウサギは?」
『私のイノセンスの一つだよ。キュアンは怪我とか治してくれるの!』
ブ「傷を治すイノセンス…?」
まさかウサギがイノセンスだとは思っていなかったブックマンは驚きながらウサギの様子を見ていた。
そんなウサギは見られているとも気づかず、怪我をしている人に近づいたと思えばちゅっと軽くキスをした。するとキスをされた人物の周りに光がまとい、光が消えたと同時にキスをされた人物の怪我が治っていた。
ブ「便利なイノセンスじゃな。」
『うん、すごいでしょーイノセンスって?』
ブ「ああ…。」
次々と傷を治していくウィリアのイノセンスをじっと見ているブックマンに苦笑いをしていたウィリアの背後から心配そうな声色でアニタが声をかけた。
アニ「ウィリア様…。」
『ん?』
アニ「いいのですか…?そのイノセンスは…。」
『しー…ね?』
アニタが何かを言いかけるのを遮るかのようにウィリアは自分の唇に人差し指を当ててこれ以上いうのは控えるように笑った。
それを見たアニタは悲しそうな表情をしたが、ウィリアは気にせず怪我人を次々と治していくウサギのあとを追いかけた。
アニ「(ウィリア様のあの能力は他人の怪我を治すと同時に、イノセンスの持ち主であるウィリアの体力を奪ってしまう能力…。ウィリア様は自分を犠牲に…。私はクロス様の代わりに守ることができなかった…。)」