とある夏の打ち上げ花火

□肝試し
2ページ/5ページ

…これは一体どうしたらいいのだろうか?
突然のことでもう恐怖感はどこかへと飛んでしまっていた 今は恐怖感よりこの状況をどうしたらいいのかそれを考えるので精一杯だった。

ずっと僕はつわ君はホラーが大丈夫だと思っていた。 だって昼間だってホラー映画見てたし…。


「つわ君…お化けとか無理なの?」


つわ君は何も喋らなかったけど何回も首を上下に振った。 ということは本当にホラーが無理らしい…。


「でも、昼間は普通にホラー映画見てたじゃん? あれはどうして?」
「えっ…映画とかは…フィクションだって分かってるけど… 自分が体験するってなったら本気で無理なんだ…」


途切れ途切れにつわ君は説明していく。
そうだったんだ…それを知らずに僕はレトさんに

『それはないよレトさん。だって昼間からさっきまでずっとつわ君とホラー映画見てたんだけどつわ君全然怖がってなかったし』


そう考えると先ほどレトさんにいった言葉が脳裏に蘇ってくる あの4人の中でつわ君を一番よく知ってる、いや知っていなくちゃいけないのは僕なのに…


「ごめん…つわ君。僕そのこと知らなくって」

つわ君は僕の言葉に答えるかのように必死に首を横に振る

「ホントは… 怖いけど

今はP-Pが俺のそばにいてくれるから 大丈夫」

そう言ってふにゃっと弱々しい笑顔を向けてくる。その笑顔に僕は不意にドキッと胸が飛び跳ねそうになった
だってこんなつわ君 普段だったら絶対に見れない
それにプラスまさかのこんな状況で見れるとは思ってのほかだったから…

いや こういう状況だったからこそこんなことを言ってもらえるのだろう…

ガサガサッ…ガサッ!

少し和らいでいた心が一気に氷のように固まってしまった。
これは先ほど聞いた物音と一緒なのだろうか?だけどさっきより確かに物音はこちらに近づいているのが嫌でも分かってしまう。

…どうすればいい?
ここから逃げるのか?
だけど心と一緒に体も石でできた仏像固まってしまい指先すらピクリと1mmすら動かない
こんな状態で一体どうやってにげるというんだ…

そう考えている時にふと何か異変を感じたそれはブルブル…と何かが僕の胸元で震えているのだ
見下ろしてみるとつわ君は凍えるかのようにさっきよりも震えていた

そうだ…怖がっている場合ではないのだ 今はつわ君を安心させないと…


ガサガッ


そう思った次の時
さっきよりも遥かに近い近距離で物音が不気味に鳴った
いや、今はもう逃げた方がいいのかもしれない
いや、逃げよう


「つわ君…!!」


僕はつわ君の腕を掴み無理矢理立たせて前の道を走る幸いちゃんと懐中電灯も持っているしこの神社を一周すればもとの場所に出られる
僕は必死になって足を動かした
本当は足はガクガクで心臓は誰かの手でわし掴みにされているように潰れそうな感覚に置かれていた

だけどここで僕が動かなくってどうするんだ…
いつもつわ君に守ってもらってばっかりなのに…

そう僕自信に言い聞かせて暗い森の道を走り続けた
キヨ君やレトさん達には心配かけるけど後で携帯に連絡すればなんとかなると思う…

というか後のことは後で考えればいいだけの話だ


「うわっ」


バタンッと物が落ちる音と同時に自分の前に映し出されている世界がクラッと変わってしまった


「いたた…」


手のひらと足に痛みが走るどうやら、転んでしまったようだ…
無理もないのかもしれない自分でも嫌と言うほどに足の震えも鼓動の高鳴りも分かっていた
だけど僕はそれらを全て無視して走り続けていたんだから…

恥ずかしいな…
あんなにカッコつけて逃げたのに 結局は転ける落ちなんて…


「P-P…ありがとな」



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ