とある夏の打ち上げ花火

□肝試し
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それから二人に連れて行かれて着いた場所は少し古びた神社。祭りで神社の下には人がいるが皆祭りに夢中で神社には人の気配などなくおまけに夜ということでそれなりに「怪談」という雰囲気はあった。


キヨ「どうだ〜いい感じだろ」


キヨ君は恐怖という感情はなくただただこの場を楽しんでいるように見える…というか、本当にこの場を楽しんでいるんだと思う。


レトルト「本当に人気のない場所だなー…祭りに流れて何人かはいると思ってたのに…」


レトさんも怖がっているような素振りは全く見えないけどキヨ君のように楽しいという感じではなく普通に周りを見回しているだけ。

そういえば、二人はよく実況でもホラーゲームを実況しているし、ホラーには慣れているかもしれない。第一、ホラーが嫌いなら普通はホラーゲームなんてやらないだろうし…

キヨ「てかつわはすさん大丈夫?さっきから一言も喋ってないけど…」

そういえば…
振り返ってつわ君の表情を見ると心なしかさっきより顔が固くなっている気がする。でも、きっと気のせいだろう


レトルト「もしかして、つわはすさんお化けとか無理だったり?」

レトさんの唇が緩みニヤリとからかうように笑っている。だけど残念ながら、レトさんの
読みは外れている。

なぜならつわ君は昼間、無理矢理僕にホラー映画を見せてきたのだから。
ずっと目を瞑っていて見ている時のつわ君の表情は見れなかったけどきっとホラー映画を楽しんでいたと思う。叫び方からしても「絶叫」とは少々言い難い叫び方だったし…どちらかというと叫んでいただけという感じだ。

P-P「それはないよレトさん。だって昼間からさっきまでずっとつわ君とホラー映画見てたんだけどつわ君全然怖がってなかったし」
レトルト「ふーん…そうだったんだ…」


僕が簡単に説明をすると気のないようや、少しガッカリしたような返事が返って来た。
きっとレトさんはつわ君がホラー嫌いというのを期待したのだろうがそれも呆気なく否定されてしまったから気のない返事になってしまったのだろう。

キヨ「おい!さっさと神社周りに行こうぜ!!」

楽しみで待ち遠しかったのか僕らが喋っている間にキヨ君はもう少し遠いところにいた。

P-P「んじゃ行こっか」

僕がレトさんとつわ君に言い3人でキヨ君の場所へと少し早足で歩いていった。

キヨ「よし、それじゃあレッツゴー!!」
レトルト「おぉー!!」

前にいる二人はノリノリだけど後ろにいる僕とつわ君はノリノリではない…ってあれ?


隣にいるつわ君を見ると確かにつわ君の表情は先程より固まっていたし暗闇のせいでよくは見えないけど少しだけ青ざめたような表情のような気がする…

でもどうして?さっきまでホラー映画を平気で見てたのに…

ちなみに、左上にレトさん、右上にキヨ君左下につわ君、右上に僕という位置で歩いている。
先程ここに来る前にキヨ君から聞いたのは神社を一周できる細い道があるからそこを歩くって聞いた。

まだ歩き始めてさほど経っていないはずだけど僕にとってはもう2時間ほど経っている気がしてならない。
怖くてあまり辺りを見回すことができないけど周りは神社を覆い囲うように生えた木々が月の光などの光に邪魔されていて唯一頼りになる光はキヨ君とレトさんが持っている手持ちの懐中電灯だけ。
音も先程祭騒ぎだった太鼓の音や人の声も何も聞こえなくなってまるで愉快で光の灯った明るい場所から暗くて冷たい場所へと追い出されたような気がして孤独感がこみ上げてきた。
一人でここを歩いている訳じゃないのに、心がだんだん冷たくなっていっている気がする。
そういえば、生きてきた中で肝試しをするのは初めてだった。
肝試しをした時ってこんなに心細くなってしまうものなんだと今日で嫌というほど実感できた。もう二度と実感はしたくないけど


ガサッ


P-P「えっ!?」


孤独感に心を揺すられて恐怖感がどこかへ行こうとしていた時。いきなり隣から草が掻き分けられるような物音が耳に響いた。

キヨ「なんだ…?」
レトルト「猫とか?」

前にいる2人は最初は驚いていたけど今は普通の対応を取っている。

キヨ「一度見に行ってみようぜ」
レトルト「そうだね」
P-P「えっ!?ちょっと…」


2人が勝手に話を進めて物音の鳴った方へと向かおうとする足を僕が止める。ここでいなくなられたら困るし、第一懐中電灯を持っている二人が行くのも可笑しな話だし

P-P「懐中電灯を持っている二人が言ったら僕ら暗くて動けないし…それに、ただの物音だと思うし…」
キヨ「んじゃこれP-P が持っっておいてくれよ」
P-P「…えっ?」


なんとか言い訳を付けて先に進もうと努力したがその努力も虚しく二人には届いていないようだった。キヨ君がそう言って渡してきたのは持っていた懐中電灯…って

キヨ「んじゃ行ってくるわ」
レトルト「すぐ戻ってくるから」


僕が一瞬だけ思考停止状態の時に二人はサササと素早く動き出し物音のなったと思われる場所へと小走りで行ってしまった。

P-P「はぁ…仕方がない。ここで待っておこうかつわ君…」


ギュッ


P-P「えっ」


振り返った瞬間、いきなり何かに体が包み込まれた気がした。すぐに懐中電灯をその何かに光を向けると。
そこには驚くことにつわ君が抱きついてきてた…って

「ちょっ…つわ君!?」

いきなりの展開に全く頭がついて行けない。だって、さっきまで何も喋らないままで二人がいなくなった途端に…

「ゎぃ」
「…?」


か細い声でほとんど僕の耳には入ってこなかった。だけど、よく見たらつわ君の体は凍えた犬のように震えていて僕に抱きついている腕からも腕からの振動で確かに震えているのがわかった。

「こっ…怖い」

ようやく聞き取れた言葉と隙間から少しだけ見えるつわ君は頬は赤く、目尻の奥からは大きな雫が溜まっていて今にも泣いてしまいそうな表情だった…って


「つわ君…怖いの無理なの?」

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