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□恋伽〜序章〜
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肌寒い風が閑静な住宅地を駆け巡る。
そんな風をその身に感じながら老人は縁側で一人、酒を煽っていた。
遠くから聞こえる騒ぎ声を聞きながら老人はキセルを噴かす。
煙がゆらゆらと漂う。
そんな様子を老人・ぬらりひょんはぼんやりと眺めていた。
「退屈そうだな」
何処からか聞こえてきた声に懐かしさを感じた。
ぬらりひょんは煙の向こうに佇む影に苦笑する。
突然現れては煙のように消えていくその御仁は自分より掴めない方である。
神出鬼没とはこの御仁の為にある言葉だ。
それほどまでにこの御仁は不思議な方であると思う。
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