『バラの館』

□吸血鬼(仮)
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さあ、こっちへおいで

青白い顔の男が僕を呼ぶ。病院の屋上。初秋の夕方。辺りは薄紅色に包まれていた。
彼は小六の自分から見れば長身で、年上のようだった。端整な❓顔立ちに優しい声音。肩までに切り揃えた黒髪。しなやかな指が僕を手招く。魅入られた❓ように彼に近づくと手を掴まれて小さな部屋に連れ込まれた。
狭い部屋にベッドとテーブルだけがある。細腕からは想像できない力でベッドに押し倒された。赤く光る獣のような双眼が僕に近づくと息が苦しくなった。
今ならわかる。僕はキスをされたのだ。

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