アイデア置き場

□『呼び止められて』(仮)
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 呼び止められて、振り返るとそこには白い菊の花束を後ろ手に持った浦凪唯史(うらなぎ・ただふみ)がいた。
 今日は私を庇って命を落とした唯史の父親の命日だ。私にとっては初めて異邦人対策局の存在と自分の正体を知った日。私は墓地へ向かう道すがらあの日の事を思い出していた。


18-5=13才→中一
16-5=11才→小五
18-15=3才→移住


五年前、私はまだ中学生だった。両親はすでに亡く、人里から離れた山の中の静かな養護施設で暮らしていた。施設内の小学校に通ったので、町立の中学への入学は一般社会に慣れる転機でもあった。
私の両親はこの世界に移住する際に何者かの手で惨殺された。だが、まだ3才だった自分には何が起こったかは分からず、気がついたら養護施設で過ごしていた。
その施設には医療施設や商店街や小学校等が小さいながらも併設されていて、生活で不自由な思いをすることはなかった。
ただ一つ嫌だったのは、毎朝、小瓶に入った液体を飲まされていたことだ。茶色い瓶に入った赤い液体はドロリとして飲みにくかったが、朝なかなか起きれない私への薬だろうと思っていた。その液体を飲むと頭がさえ、活力も出てくるからだ。

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