リクエスト

□笑顔のために
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「ナツぅう!!朝だよー!」
「んぁ……?」


目を開けるとドアップでハッピーの顔が見えた。
気のせいか不機嫌そう。

「もー、昨日勝手に帰ったでしょ!オイラ怒ってるんだよ!」
「あ、ごめん…ルーシィに聞かなかったのか?」
「聞いたよ?泣いてるかもって」
「泣いてねーよ!!ルーシィの奴何言ってんだ!」
「でも、ナツ寝てる時ずっと悲しそうだったよ?嫌な夢でも見たの?」
「え……」


悲しい……?
昨日はグレイの笑顔も見れたし、美味いもんも食った。
悲しいことなんて………

「………あれ?……涙…?」
「ナツ………無理しなくていいよ? 本当はグレイに伝えたいんでしょ?」
「………っ……でも俺…これ以上、き、嫌われたくねぇ……」
「ナツ……」
「いいんだ。……っしゃぁぁぁあ!!!ギルド行くぞハッピー!」
「……あい!」


お願いナツ……悲しそうに笑わないで………
ハッピーの言葉はナツに聞こえることはなかった。




「おっはよーー!!」
「おはーー!!」

ギルドに着いて何時ものように元気良く中へ入る。
今日はクエストに行こうか。
またチームで行ってもいい。
少しでもグレイと同じ時間を過ごしたかった。

そう思ってクエストボードを見に行こうとした時、がっしりと腕を掴まれた。
誰かなんて、匂いでわかる。
高い体温が更に上がったような気がした。


「な、なんだよ…」

いつも通りに接しているだろうか?
心の端でそう考えながら目の前の人物を見る。
何かいいことがあったのか、楽しそうだ。

「(んな間近でそんな顔見せんな!心臓に悪い……)」
「なぁなぁナツさんよ」

間近で見るグレイに内心ドギマギしていると、グレイに声をかけられた。
それだけでもドキドキと心臓がうるさい。
かろうじてなんだよ、と返すとグレイが更に楽しそうに笑う。


「お前好きな奴できたんだって?誰だよ、教えろよ」
「は………」

スイっとカウンターの方へ目がいく。
そこにはもちろんミラと、ルーシィが居た。
二人は口パクでがんばれと言ってくる。

「(がんばれって何をだよ!!!)」
「おい教えろよ〜水くせーぞナツさんよ。誰だ? やっぱルーシィとかか?エルザは流石にねーよなぁ」

誰だよと何度も楽しそうに聞かれるうちに、だんだん冷めていった。
心が冷える………。

パシンーーー
鈍い音を立ててグレイの手を弾いた。


「………おい」
「…………だよ……」
「あ〜? なんだって?」

ギリッと歯が音を立てた。
そんなに力入れてるのか。
場違いなことも考えながら口を開いた。


「お前だよ!!!!」



「……へっ?」


グレイの間抜けヅラを一目見てギルドを飛び出て行く。
誰かに呼び止められた気がしたが、そんなこと気にしてられない。
どこでもいい、一人になりたかった。



暫くの間呆然としていると、声がかかった。

「ミラちゃん、ルーシィ…」
「グレイって鈍いのね」
「ねぇグレイ。ナツは気持ちを伝えたわ。そのままにしておくの?」

行ってあげて? きっと、泣いてる。

言葉にはせず、視線でそう、伝える。
きっと上手く伝わったにだろう。グレイは急いでギルドから出て行った。


「上手く、いきますかね〜?」
「うふふ。きっと大丈夫よ。お茶でもして待ってましょ」




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