短い

□録音させて
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「やっぱり諦めらんねえ」
「なにが」
「朝お前に起こしてもらうこと」


家を出てすぐにまた同じことを言われた。
その諦めないとこは尊敬するがいい加減しつこい。
さっきも同じことを言ったが朝は本当、忙しい。
朝は意外と時間は早く過ぎてしまうもので、朝飯も弁当も作んなきゃなんねえ俺は毎朝てんやわんやだ。
そりゃグレイがすぐに起きてくれりゃやることは一つ減るわけで、嬉しいのは嬉しい。

でも本当、こいつはなかなか起きない。
目覚ましもガンガン鳴ってんのに一向に起きやしねえ。
暫くしたら起きてくるが、マジで起きない時は俺が起こしている。


「なんでそんなに嫌なんだよ……」
「なんでって……眠い時に気持ち良さそうに寝てる奴見るとまた寝たくなるだろ!」
「え。なにそれ、ナツが俺の布団で寝るってこと? やべえ。やっぱ毎朝…」
「だぁぁぁぁもううるせえ奴だな! 誰がそんなこと言ったよ!」
「だってそういう意味じゃん。昔は一緒に寝てたじゃねえか……あぁ! そうだ!」
「一緒には寝ねえぞ」
「なんでだよ!!」
「だってお前すっげえ抱きしめてくんだもん。眠れねえし」


それで俺が何回窒息死しかけたか。
こいつは知らないんだろうな。
気持ち良さそうに寝てたから。

はぁ、と昔のことを思い出してため息を吐く。

チラリとグレイを覗きみればまだ真剣に何かを考えているようだった。
……こうやって黙って突っ立ってればタダのイケメンなのにな。
何で口を開けば俺のことばかり言うんだろう。

何回同じ学年の奴にラブレターを渡してと頼まれらことか。
まぁ全部笑顔でいらないと言われたのだが。


「あっ、そうだ!」
「……なに、変なこと言うなよ」
「目覚ましにお前の声入れとけばいいんだよ!」
「……はぁ?」
「ナツの声録音しちまえばナツが起こしに来なくても俺すぐ起きれるだろ?」
「……んー…まぁ、そうか…」
「だろ! んじゃあ帰ったら録音するから俺への愛の言葉考えとけよ」
「なんで愛の言葉なんだよ!」


意気揚々と走り出すグレイ。
いつの間にか学校に着いていた。




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