短い

□通学中
2ページ/2ページ




「グレイ今日も会えたのかい?」
「だれに」
「そりゃ桜の君だよ」
「毎朝会ってる……いや、来る?」


始業式のあの日から欠かさず毎朝見かける桜色のあいつ。
最近は余裕が出来てきたのか駆け込み乗車はなくなった。


「朝苦手そうなのに頑張ってんだなーって…」
「んー、僕も一回見てみたいね。そうだ、明日一緒に行こうよ」
「お前俺より遅いじゃねーか。大丈夫かよ」


大丈夫大丈夫。
ロキは語尾に音符でも付けそうな勢いで言った。
それに暫し不安を覚えながら、今日の授業に耳を傾けた。




次の日、約束通りロキは俺がいつも乗っている時間にやって来た。
来れるならいつも予鈴ギリギリに来なくていいと思う。


「楽しみだなー。まだなのかい?」
「あー、あと一駅。お前立てよ」
「酷いなぁ。あと一人は余裕で座れるじゃないか」
「お前と隣に座ってたくないだけだ」


またロキは酷いなぁと言って、駅に着いたと同時に立ち上がった。
それと、目の端にチラついた桜色。

あぁ、いつ見ても可愛い。

その、俺を見ると若干口角が上がるのに優越感を感じる。
桜色はいつも通り俺の隣に座った。

ふ、とロキの方に目を向ければニヤニヤしながら口パクで何かを伝えてきた。
大方本当に可愛いねとかそんなんだろう。

否定する気もなかったため、ドヤ顔してやったら苦笑している。

まぁ、いつまでも黙っていては不自然なため、何か話そうと口を開いた時……

トスッ

肩にかかる重み。
チラリと横を見れば桜色が俺にもたれ掛かって寝息を立てていた。


「えっ……(ちょおおおお!!! なにこれえええ!!! 確かにいつも眠そうだったけど!! いつもギリギリ大丈夫だったじゃん!!)」
「グレイちょっと落ち着きなよ。いいんじゃない? どうせ終点まで一緒なんだから」
「いや、そうだけど……(俺の心臓がもたん!!)」
「……はぁ…ちょっとの辛抱じゃないか。それに、可愛い寝顔が見れるんだからいいんじゃないかい?」


ロキに指摘され、チラリと横に目を移す。
確かに可愛らしい寝顔が俺の肩に……


「(だから心臓もたねえってええええ!!)」
「グレイ……公共の場だってことは覚えておいてね」


ロキに呆れられながら電車に揺られる。
考え事をしていると時間が経つのは早いもので、もう次の駅は終点だった。

少し名残惜しいがこの桜色を起こさなければ。


「おい、おい……」
「んぅ……? あれ…ここどこ……」
「次終点だよ。よく眠れたかい?」


ロキが声を掛けると桜色はガバリと起き上がった。


「まさか……あの、もたれ掛かって……ました?」
「んー、まぁな」
「ごごごごめん! なさい!! 毎朝あんたいい匂いだからついつい眠くなっちゃ……あああ今のなし!!」


慌てふためく桜色。
そんな慌てなくったって、大丈夫なんだから。
つーか、なんか凄いこと言ったな。


「匂い……」
「わ、忘れて! じゃねーと恥ずかしくてもうここ座れねー!」
「……まぁ、そこまで言うなら…」


桜色が座らなければ、俺の毎朝の楽しみがなくなる。
それだけは避けたい。


「じゃあかわりに友達になろっか。俺はロキ。こっちのいつも君の隣に座っている彼はグレイ。俺たち同級生なんだ」
「かわり、なのか? えっと、俺ナツ。よろしくな。グレイ、ロキ」


そう言ってナツは綺麗に微笑んだ。



春は出会いの季節……
二年の俺にも出会いはあったな。

フワリとナツの頭を撫でながら心の中で呟いた。




end




あとがき
今回はオマケなしでww

えーっとですね。私匂いフェチでww
それがナツにも反映されてるww

匂いで人覚えたり匂いで安心したり……なんかすいません。

電車通学なんで、私も似たようなことあるんですよ。
大体おんなじ人が乗ってるんで居たら安心して、居なかったらどうしたんだろうと考えたり。

べ、別に恋なんてしてないんだからね!!(((終われ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ