リクエスト

□プレゼントは
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「えっ……一緒にいらんねえの?」


そう言うと申し訳なさそうに眉を下げる愛しい桜色。
明日はこいつと付き合って初めてのクリスマス。
俺の計画ではブラブラと外に出てギルド以外での外食。
そして家に帰って甘い甘い夜を味合わせてやろうと……思っていたんだが……


「なんでまた……」
「その……指名でクエスト来ちまってさ…断れねえんだよ」
「なんでクリスマスにクエスト入れてくるんだよ!! 依頼人は誰だ!!」
「なっ、何する気だよ」
「あぁ? んなもん決まってんだろ。取り下げてもらうんだ」

俺がそう言ってギルドを出て行こうとすると桜色……ナツが俺の腕を取った。
いかにも不機嫌ですというオーラを醸し出しながらちらりとそちらを向けば、ションボリと眉を八の字に下げてこちらを見ていた。

やめろよ。この顔に弱いんだ俺は。


「……あーぁ。結構計画してたんだぜ? 俺」
「分かってる……でもどうしても断れねえんだ……」
「どこまで行くんだよ」
「わかんねえ」
「はぁ?」

分からないとは一体どういうことか。
クエスト来てたんだろう? 名指しで。
依頼人の場所までどうやって行くんだ。

口には出してはいないが顔に出ていたのだろう。
えっと、と歯切れ悪く説明を始めた。


「本当に分んねえんだよ。ただ名指しでクエスト来ててよ。集合場所はこのギルドになってんだ。依頼人がここまで来てくれるらしくって」
「…………怪しすぎんだろーがぁ……なんで受けんだよ」
「日付見てなかったんだよ……ミラに言われて気付いたんだ……」
「このおっちょこちょいめ! ったく……依頼人は何時くらいに来るんだ」
「それがよー……」
「なんだ。それも分かんねえのか?」
「いや、朝の7時だ。起きられっかなー」


最後にペシリとナツの額を叩いたのは勘弁してほしい。



結局ナツはギルドに泊まっていくらしい。
明日一緒に過ごせないということもあって、俺も一緒にギルドに泊まることにした。


「何にもすんなよ」
「しねえよ。するとしたらキスまでにしてやる」


チュッ、とリップ音をたてて軽くキスをすると、ナツの顔は少しずつ赤らんできた。
はぁ…なんで明日一緒に居れねえんだ…。
あぁ。クエストのせいか。
畜生依頼人……明日一目見たら一発殴ってやる。

少し危ない考えをしていると、ペチンと頬を叩かれた。


「何すんだよナツ……」
「お前絶対今依頼人殴ってやるとか考えてただろ」
「……………」
「そんなことしたら許さねえからな」
「……………」
「……早く終わらしてくるから、その…その後でもいいなら……会えるから…」
「………あーっもう!! 分かった!! 何もしねえ!!」


そう言って力強くナツを抱きしめる。
苦しそうな声が聞こえたが、少しくらい我慢しろ。
明日の分のナツを補給しとくんだ。
まぁこれだけじゃ全く足りないんだが。

早く帰って来いよ、とボソリと呟くと勿論だ。とナツは笑顔で答えた。



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