リクエスト

□Child degradation
1ページ/3ページ



いつも通りに目が覚め、いつも通りにギルドへ向かう。
そしていつも通り愛おしい桜色が俺を出迎えてくれるはずだった……
はずだったのに……


「なんでこんなに騒がしいんだ……?」


確かにいつも騒がしいギルドだ。
朝から酒飲んでる奴だっているし、酔ってもないのに騒がしい奴らも多くいる。
代表的なのはナツだな。

けど、なんか今日の騒がしいはわけが違う。
大勢がガヤガヤとうるさいのではなく、少数の……寧ろ一人の騒ぎ声だ。
声の高さからいって子供。
けどこの声、何処かで聞いたことがあった。
何処かは忘れてしまったが。

外でウダウダやってても始まらない。
意を決して、俺はギルドの扉を開けた。

多くの視線が俺に向けられる。


「どうしたんだ? 子供でもいんのか? 声が……」
「グレイ、実はね……ナツが子供になっちゃったの!」
「…………………は?」


ルーシィの答えに俺はたっぷり間を開けて一言だけ返した。
いやいや、だって、おかしいだろ?
いきなりナツが子供になったとか。
わけわかんねーよ?


「記憶まで子供の頃に戻っちゃったみたいで、しかもギルドに入る前の……」
「いやいや、冗談だろ? 子供になるとか……」

「うるっせえええええ! 近寄んなぁぁぁあああ!!」


咆哮とも言える大声。
声の高さからしてやはり先ほど聞いた声で間違いないだろう。
そして、あの声が昔のナツの声だということも、間違いないだろう。

カウンターの後ろから小さく炎が見える。
ナツが吐いたのだろう。
ミラちゃんも困ったように眉を潜めている。


「マジでガキになっちまったのか。ナツの野郎……」
「だぁーれも近付けたがらないの。まだイグニールと一緒にいた時期だろうから…」
「………イグニール、ね……」


ナツは昔、竜に育てられた。
炎の竜、イグニール。
父親と言える存在。
それがある日、姿を消した。
いくら探しても、見つからなかった。

今この場にいるナツはまだ、イグニールと一緒にいたのだろう。
そりゃ知らない奴らばっかで信頼している父親はここにはいない。

不安で、不安で、寂しいはずだ。


ミラちゃんの肩に手を置いた。ここは任せろ、という意味を込めて。


「マジでガキになっちまったな。ナツさんよ」
「……っ誰だ! 近寄んな! イグニール! どこだよイグニール! たすけて…っ」


ホロリとナツの瞳から涙が一筋、零れた。

それを見た俺は、一瞬でナツとの間を詰めて、出来るだけ優しく、怖がらせないように抱きしめた。
暴れようとするナツに大丈夫だと何度も何度も伝えた。


「ここにイグニールはいねぇ……けどな、誰もお前を傷つけなんかしねーよ。……記憶に無いかもしれねぇけど、俺達は家族なんだから…」
「……っく、っうっ……ひぅぅ…っイグ、ニールゥ…」
「怖かったな。大丈夫だ…。俺が守ってやっから…」







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ