リクエスト
□笑顔のために
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分かってる……お前が俺のことなんとも思ってないことなんて…
分かってる……お前が俺のことをただの仲間だとか、喧嘩相手だとかにしか思ってないことなんて…
……分かってる……お前が俺のこと、大嫌いだなんてこと………
そんなこと、俺が一番よく分かってる。
喧嘩吹っかけても迷惑そうにしかしない。
でも、それでもその間は、その間だけは、俺のこと見てくれてるから……俺だけを見てくれるから…
だからやめられない。やめたくない……。
たとえあいつ……グレイに彼女とかできても、やめたくない。
はぁ、とため息を零す。
一体最近俺はどれだけため息を吐いただろう。
しかも、あんな奴のために…。
心の中でそう呟いてチラリとグレイにバレないように盗み見る。
ギルドの仲間たちと楽しそうに何かを話している。
あんなに笑ったとことか、好きなんだな…俺。
笑っているグレイを見ると心がポカポカする。
そう思い始めたのはいつからだろう。
気がつけばグレイを目で追っていた。
偶に笑いかける笑顔を見るたびにドキドキした。
暫くわけが分からなかったけど、ルーシィやミラに相談したところ、それはグレイに恋してるんだって言われて、ストンと落ちてきた。
大当たりだったんだ。
その気持ちが分かって嬉しい一方で、悲しかった。
グレイは俺のことが大嫌いなんだ…。
だから、気持ちは伝えない。
これからも、ずっと。
だからせめて、遠くから見ることは許して欲しい。
誰に言うでもなく、心の中で呟いた。
「ナツ。まぁたグレイ見てる」
「いいだろー……見てるだけなんだ。誰にも迷惑かけてねーし…」
「ナツがいいならいいけどさ。……本当に言わないの?」
「言わねー。一生……いいんだ、俺は。俺が見れない笑顔を遠くから見るだけで、幸せだから……」
「そう……(だったら……)」
そんなこと、泣きそうな顔で言わないでよ……。
ルーシィの言葉はナツに聞こえることなく、ルーシィの中に消えていった。
今日帰るな。ハッピーに言っといて。
そう言ってナツはギルドを後にした。
ルーシィはいたたまれない気持ちになった。
大事な仲間があんなに悩んでいるのに何もできない。
「(私はあんなに助けてもらったのに……)」
ダラリとカウンターに倒れると、コトンと何かを置く音が聞こえた。
妖精の尻尾の看板娘、ミラジェーンが飲み物をテーブルに置いたのだ。
「ミラさん……ナツどう思います?」
「そうねぇ……あんなに無理に笑った笑顔はナツには似合わないわね」
「ですよねぇ……何かしてあげたいんだけど、こればっかりは……」
「私たちにどうにか出来ることじゃないわよね」
はぁ、と二人揃ってため息を吐くと隣の席に誰かが座った。
顔を確認すれば、原因の……
「グレイ…」
「なんだよ…つか二人ともどうしたんだ? ため息なんか吐いてよ」
「……ちょっとねぇ……」
「実はねグレイ。ナツに好きな人ができたみたいなの」
「えっちょ、ミラさ……!」
「はあああああ?!マジかよ?!ナツにいいい?!」
「あんた声デカイ!!!」
ルーシィの指摘にあ、悪りい。と素直に謝るグレイ。
暫し落ち着くために深呼吸を繰り返す。
「で?ナツの好きな奴って誰だ?」
「………えぇ〜っと……」
「そんなこと、ナツ本人に聞かなくちゃ」
まー、それもそうだな。と、グレイは楽しそうに明日からかってやろうと笑みを浮かべていた。
これじゃあ、ナツが浮かばれない…。
あのねぇ、とグレイに口を出そうとすると、ミラさんに止められた。
口パクで"きっと上手くいくわよ"とウィンクまでされれば、何も言えなかった。
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