短い

□録音させて
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俺の弟は素直で可愛い。
自慢の弟だ。
昔はそりゃあグレイ兄ちゃんグレイ兄ちゃんって言って後ろをいつも追ってきていた。
それの可愛いこと可愛いこと……

まぁ、そんな弟も今年高校に入学した。
もちろん俺と同じ学校。

初めは友達できるかなーと不安そうにしていたがこいつのコミュニティ能力なめんなよ。
どんな奴とでも仲良くなれる。
そんなんだから俺は弟に悪い虫が付かないかいつも心配なのだが。


「グレイー! 早くしねえと置いてくぞー!」
「待てナツ! お前に置いて行かれたら俺行かねえからな!」
「どうでもいいからさっさとしろよー。ていうかお前3年だろ……んなこと言っててどうすんだよ」


俺の部屋のドアを開けて入ってきた桜色のツンツン髪のこの天使こそ、俺の弟。名前はナツ。
呆れたような顔をして、そう言ってきた。


「お前、朝だけは絶対ダメだな」
「……低血圧なんだよ…早く俺に起きて貰いたかったら毎朝起こしに来ていいんだぜ」
「だるいし朝飯作んなきゃだし嫌だ」
「いいじゃねえか! 俺ナツの声聞いたら一瞬で目ぇ覚めるぞ?!」
「なんでだよ……てゆーかマジで時間ねーって! 早くしろよ」
「ほら、朝起きて顔洗いに行った後とかでもいいからさ!」
「だぁぁぁあもうしつこい!! 朝なんか寝ぼけてんなこと忘れてるよ!」


くっ、そうか……寝ぼけたナツも可愛いが忘れられては元も子もない。
どうしたもんかと考えているといい加減ナツに殴られた。
イライラしきっているいうで、早くしないとガチで置いていかれちまう。

それだけはどうしても避けたい俺はいそいそと着替え始めた。
すると途端にナツは顔を赤くして……


「き、着替えるなら着替えるって言いやがれ!!」
「え、いや、そんな慌てるもんじゃ……」
「うっせえバカグレイ! 下居るからさっさと来いよ!!」


なんて可愛いやつなんだ……
焦って出て行ったナツに口角を上げて、着替えを再開した。






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