短い

□ツンデレ彼女のデレ期
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寒い日が続いている。
異常気象のようで寒くなったり暖かくなったりの繰り返しだ。

別に暑いのも寒いのも平気だが、やはり最近は体調を崩す奴が多い。

そんな俺も人のこと言えるたちじゃねえけど……


「ぁ"ー、喉痛え"……」
「ガラガラじゃないの。熱は?」
「大丈夫。……飴なんかあったか?」


ウルにそう聞くとあったかしら? とリビングの引き出しを漁り始めた。
けど、ぽーんと飛んできたのは兄貴のリオンからで。


「それしか無いからな。帰りに買って来い」
「あぁ"、ざんぎゅー」
「ヒドイな…」


小さな飴のおかげで幾分かマシになった。
リオンに言われたのは癪だが、帰りに買って来よう。

トボトボと学校に向けて足を運んでいると、グレイーと俺を呼ぶ声。

後ろを振り向けば可愛い桜色の少女。
名前からして夏のように元気な、俺の大好きな少女。


「なんだー? ナツがこんなに早いなんて、今日は雨か?」
「なっ…! うっせぇよ! ……一緒に行きてえって言ってたじゃん……」
「…………へっ?」


確かに、俺たち付き合ってんだし一緒に行きてえとは常々思ってた。
一回相談すると起きれないと一撃されたのだが……。

どーゆー風の吹き回しか……


「なんだよ……一緒に行きたくねえなら…行かねえよ…」
「んなこと誰も言ってねえだろ! ちょっと驚いただけだ」
「あ、そうだ。今日一緒に昼飯食おうぜ!」
「はぁあ?! おまっ、アレだけ俺が一緒に食いたいっつっても嫌だって……!」
「そっ、そういう気分なんだよ!」


マジでなんかおかしい……普段絶対嫌がってしないことなのに……
なのに自ら誘ってくるだと…?!

さっき言ったとおりナツは付き合って以来ルーシィやらエルザといった面々と昼食を取っている。
俺のことは目にも入れずに……


「グーレイ! 何ボーッとしてんだよ? 早く行こうぜ」
「えっ、あ、あぁ」


まぁ、デレが来たんだと思おう。
ツンツンデレの具合でデレが漸く来たんだと。

それから学校までの数十分。
初めて恋人らしい事をしたと思う。
さすがに、手は繋いでくれなかったけど……。

暫く話に夢中になっていて気がつかなかったが、再び喉の痛みが俺を襲った。


「………グレイ、声変」
「あ"ー、ちょっと痛くてな……たいしたことねーと思うんだけどよ」
「やっぱりなー。昨日帰るとき変だなって思ったんだ。ほい。のど飴」
「えっ……あの、ナツさん? 昨日って、今日からおかしいんだぜ? 俺の喉」
「いーや。ちょっとダルそうだったんだ! だから今日調子悪くすんじゃねーかと思ってさ。グレイ今日弁当か?」
「……購買だけど……ナツさんエスパー?」
「これ以上悪くなんねーように体にいいもん詰め込んだからな! 残さず食えよ」


ポンっと渡された弁当箱。
さっきの言いようから、コレはもしかしなくても、ナツの、手作り…。

驚きのあまり上手く礼は言えただろうか覚えてない。


それからナツは学校に着いてからも何かと世話をしてくれた。
喉が痛いなと感じたらすかさず飴玉をくれたり、寒いなと感じたら生姜湯をくれたり……準備良すぎだ。

そして昼休み。
ナツの初手作り弁当はかなり美味かった。


「美味かったか?」
「ああ。ごちそーさんな」


そう言えばナツは照れたようにはにかんだ。
可愛すぎだろ。

たまらずギュッと引き寄せた。
嫌がるかとも思ったが、すんなり抱きしめられている。


「ナツ……今日マジでデレすぎ…ツンどうした」
「別にデレてるわけじゃねーし! ……ただ、その…恋人らしい事を……してないなって…ちゃんと、オレもグレイのこと好きだし、だから…」
「ああああもう。なんでこんなに可愛いんだお前は!」


やっぱデレすぎだ。今日のナツは。
キュンキュンする。

更にギュウギュウと抱きしめて、ナツの首筋に顔を埋める。


「ぐれっ…くすぐってえっ…ははっ」
「我慢しやがれ……今までこんなんしてたらすぐ殴ってきやがったくせに」
「だって……恥ずかしかったんだよ……」
「もう恥ずかしがんなよ……殴られんの痛えし、拒絶させたって結構落ち込むんだぜ?」
「うっ……ごめん…」


ナツはそう言って俺の右頬を撫でた。
そこは多分昨日殴られた部分だ。
目で痛かったか? と訴えてくる。
もう大丈夫だなんて、言えばいいんだろうけど……もう少し触れていたかった。

そっと手を重ね、空いている手でナツの頬に手を添える。
俺の真剣な表情に何かを読み取ったのだろう。
いきなりあわあわと慌て出し、顔も赤くなっていく。

ゆっくり、ゆっくりと近づいて行く……
あと数センチというところで、漸くナツも目を閉じたーーー



ところでチャイムが鳴り響いた。


「…………」
「…………」
「……戻るか…」
「………そう、だな……」


広げていた弁当箱を直し、心の中でため息を一つ。

もう少しだったのになぁ……

まぁでもよく考えればナツに風邪が移ってしまうかもしれないからこれでよかったにはよかったが……。

でも、したかった……。

ま、これからもチャンスはある。
俺だけが好きじゃないってことが分かったんだからそれでいいじゃないか。

気持ちを切り直し、ナツを呼んだ。
もう準備もできただろう。


「ナツ、そろそろ行けるか?」
「……………」
「ナツ?」


ナツは突っ立ったまま、こちらを睨んできていた。
真っ赤な顔で……。


「え、ナツ…? どうした?」
「………だからな……」
「はい?」
「一回だけだからな!!」


何のことかわけが分からなかった。
気付けばグイッと襟を持たれて、急に近づいて行くナツの顔。

そしてふにゅっとした感触が唇に当たる。


数分、いや、実際は数秒かもしれないが、確かに重なった。


「…ナツ……」
「……は、早く治る、おまじない…?」
「………もっとしてくれよ…そのまじない」
「いっ、一回だけだって言っただろ!」
「あと何回かしてくれたら治る。すぐ治る」
「バカ言ってねえでさっさと戻るぞ!」


バタバタと慌ただしくかけて行くナツ。
その顔は耳まで真っ赤で。
俺も遅れて教室へ戻っていく。

偶には風邪とか引いてみるのもいいかもしれない。
ツンデレな彼女を持ってると、普段見れない甘い顔が見れるだろうから。





end
→おまけ&あとがき
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