短い

□小5の春に
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「グレイいらっしゃい。お隣に挨拶に行くよ」
「だりぃ……あとでも良くね?」
「そんなこと言ったらあんた絶対行かないでしょ」


母親のウルに言われ、渋々重い腰を上げる。
挨拶なんて面倒くさい。

毎日家から出るのだからいつかは出会うだろう。
その時にでも挨拶してしまえば終わりだ。

そんなことを思いながら家を出て、隣の家に向かう。


ウルがインターフォンを鳴らす。
少しバタバタと音が聞こえてインターフォンからはい、と声が聞こえた。
声の高さからして男のようだ。


「忙しい時間にすいません。隣に引っ越してきた者です」


ウルが言うと、声の主はちょっと待ってくださいと言ってインターフォンを切った。
出てくるのだろう。

少しの間でガチャリとドアを開ける音が聞こえた。

出てきたのは予想した通り男だったけど、ある意味予想外だった。
だってこいつ……


「(かなり可愛い……)」
「はじめまして。ほらグレイ。挨拶しなさい」
「あ、あぁ。グレイ・フルバスターです……」
「はじめまして。俺はナツ・ドラグニル。よろしくなグレイ」


キラキラとした笑顔が印象的だった。
ツンツンの髪は桜色で、暖かい、そんな人。
ナツの年は分からないけど、全然ガキに見えたのだろう(確かに小5のガキだが)よしよしと撫でられた。
けど、嫌な気はしない。


「俺んとこに預かってる子居るんだよ。グレイと同じくらいの年だと思うから仲良くしてやってくれよ」
「よかったわねグレイ。早速友達できたわよ」
「まだできてねーし」


そろそろ帰ってくるはずなんだけど。
ナツがそう言うと遠くからナツさーんという声が聞こえた。


「ただいまナツさん!」
「おかえりスティング。ちょうどよかった。隣に引っ越してきたんだって。仲良くしろよ」


スティングと呼ばれた金髪の男はこちらをチラリと見た。
一応どうも、と挨拶しておく。


「ほらスティングも」
「どうも」
「だけかよ」
「こいつだってそうじゃん」
「こいつじゃねーよ。グレイっていうんだ」
「俺スティングよろしく。バイバーイ」
「あっこら!」


スティングはさっさと家の中に入って行った。

なんなんだあいつ。
態度悪すぎだろ!

はぁ、とナツがため息を吐いてごめんな。と謝ってきた。


「人見知りするんだ。あ、でっでも悪い子じゃねーから! 仲良く、してやってな?」


しょんぼりと眉を下げるナツ。
それを見れば怒る気なんておきなかった。

俺も人見知りするし、と小さく呟くとウルにかなり笑われた。
解せぬ。

けどまぁ、ナツにありがとう、と頭を撫でてもらったから、まぁいいかな、なんて思う俺。
一体どうしたんだろう。

家に帰ってもナツの笑顔が頭から離れない。
ずっとずっと、考えてしまう。


「グレイったら、ナツ君に惚れたな〜」


ウルの声すらも聞こえなかった。

そんな小5の春。





もうちょい続くよ→

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