短い
□通学中
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暖かい春の季節。
進学する者にとっては新しい出会いの季節である。
「(つっても、2年の俺らに出会いもクソもねーけどな)」
満員電車の中優雅に座って手持ちの小説を読んでいる。
整っている顔のせいか周りにいる女子達の視線の的になっている。
一年間通い慣れた通学中、新しいものといえば今年度から電車通学になった学生たち。
でもそんなものに興味もなく、黙々と本を読み進めている。
あと一駅行けばこの圧迫感も多少なくなる。
駅によってたくさん乗ってくる所、逆にたくさん降りる所とある。
生憎もうこの先たくさん乗ってくる所はない。
次々に降りて行き、終点に着く頃にはすっかり人もいなくなっている。
考えている間にもう一駅越したようで、座っている人たちばかりだった。
隣に座っていた人もいつの間にか居なかった。
次の駅に着いた時、ストンと隣に誰か座った。
「(……見たことねーから年下だな。つか髪ピンクって……)」
今座ってきた男子生徒。
髪がツンツンでしかもピンクだ。
今の時期綺麗に花を咲かせている桜を連想させる。
「(この時期、マフラーいるか?)」
何かの鱗のように見える長いマフラーをグルグルに巻いている。
暑くはないのだろう。汗もかいていない。
小説を読みながらチラチラと見ていると、カクンと首が揺れた。
「(まぁ、結構早い時間だしな……つか、男子にしては可愛い顔してんな…)」
カクンカクンと頭が揺れているのを見ると、微笑ましい。
一年前までは己もこのようだったのだ。
『次はー終点ー終点ー皆様お降りください』
アナウンスの声に意識が戻ってきたのか、しっかりと目を開け顔を上げた。
その男子は軽そうなカバンを引っつかんでドアの前に立った。
「(明日、また会えっかな)」
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もうちょい続きます(`・ω・´)