短い

□ハッピーハロウィン
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ドンドンドンとドアが叩かれる音がする。
眠たげな目を擦りながら時計を見る。
現在午前3時
迷惑にも程があるだろう。
一体誰だこんな時間に。

のろのろとベッドから降りて玄関まで行く。


「誰だ?」
「……ぉ、おれ……ナツ…」


か細い声が聞こえた。
ナツだと分かると話は早い。
勢い良くドアを開けてナツを招き入れようとした。


「どうしたな………つぅううう?!」
「ぐ、グレイ〜っ」


ナツを見た瞬間驚きで固まってしまった。
いや、こんな夜遅くに来ること自体驚きなのだが、それよりも今のナツの格好だ。

よく小さい子が想像する魔法使いとか魔女とかいるだろ?
大概大きなとんがり帽子を被って真っ黒いローブを着た。
そのままそれをナツが着ていた。

だが、殆ど想像する時って足首まで長いローブだと思うんだ。
けど今のナツは太ももがギリギリ出るぐらいのミニのスカートに長めのブーツを履いている。


俺が壊れるのにそう時間はかからなかった。


「お前……その格好……」
「〜〜〜っと、とりあえず入れてくれ!!」


無理矢理と言っていいほどナツは家に入ってきた。
やっぱり外では恥ずかしかったのだろう。耳まで真っ赤だった。

はぁーと深いため息を吐いた。


「んで? 何だその格好は?」
「……俺、ハッピーと一緒にクエスト行っただろ? 帰って来たのさっきなんだよ」


そういえばそうだったな。
そんでナツが居ないから俺不機嫌だったな。

とりあえずお疲れ、と一言言っといた。


「なんかさ、ギルド行ったらミラとか女どもが居たんだよ。嫌な予感したんだけど、とりあえず報告したんだ。あ、ハッピーは先に帰ってたんだ。そしたらエルザに背後とられて………」


こんな格好になった。
最後の言葉は小さくてあまり聞こえなかったが、そう言った。

一先ず、泣きそうになっているナツの頭を撫でる。


「そんで、何で俺ん家に来たんだ? 家に帰ればよかったじゃねーか」
「帰りたかったけど……その……が……って……」
「あ? なに? マジで聞こえねー。もう一回言って」


するとナツは更に顔を紅く染める。

意を決した様に勢い良く顔を上げた。


「グレイが喜ぶって言うから!! だから来たんだよ!! 悪いかコノヤロー!!」
「ーーーっ」


可愛すぎんだろ……
どうせミラちゃんやルーシィ達に言われたんだろう。
嘘かもしれないのに(そんなことは決してないが)恥ずかしいのにわざわざ家まで来て……
どんな格好してたってナツはいつも俺のドツボを抑えてくれるが……

俺が喜ぶって聞いただけで来るなんて……
俺愛されすぎだろ……


我慢できず思い切りナツを抱きしめる。
多少なりとも暴れるかと思ったが、素直に腕を背中に回してきた。


そこで、ふと思った疑問。
何でミラちゃん達はナツにこんな衣装を着せたのか。


「なんでミラちゃん達はナツにコスプレさせたんだ?」
「あ、なんか明日…もう今日か。ハロウィンだからっつって、えぇと、なんだっけ? お菓子貰える呪文? 教えてもらった」
「あー、ハロウィン今日だったか。なるほどな。だからって今着せる意味が分からねぇ」
「今日ギルド行くとき着てこいって言われた」
「はぁっぁああ?! 朝っぱらからこんな可愛いナツを他の奴らに見せるわけねーだろ!! 着て行くっつーんなら着替えて行け」
「可愛くねー! つか服取られたんだよ……」
「じゃあ俺の着て行け」


ナツは暫く固まってからおう、と小さく返事した。
よく見ればまた頬が少し紅くなっている。

……………………

ナツって何でこんなに可愛いんだ?
ちょっと調子狂うぞ……。

またナツの髪をかき混ぜた。
気持ちがいいのか、目を閉じて幸せそうだ。

………食っちゃっていいかな……

そこまで俺の思考がアダルトちっくな方へ向かっている時、ナツが思い出したようにあ、と声をあげた。


「なーなーグレイ!」
「なんだよ」
「えーっと、トリックオアトリート?」
「………え」
「ハロウィンだろ? お菓子くれなきゃイタズラするぞ!」
「………………」


俺の理性がプツンと音を立てて切れた。
いや、今のはナツが悪いよ。
あんな可愛く誘ったナツが。

そのままナツを横抱きにして立ち上がる。


「お、おおい? グレイさん? え、ちょ、なに……」
「生憎ウチには菓子がねえ。つーわけで、イタズラさせろ」
「いやいやいやお前される側だろ?! するのはーーーんむっ!」
「暴れんなって……大人しくイタズラされろ」


顔を真っ赤に染めたナツを見ながら、ゆっくりと寝室へ戻って行った。






end
→オマケ&あとがき
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