短い

□追っかけ手前(stkじゃないよ)
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「おいロキ、まだなのか? そのアイドルグループが居るっつー場所は?」
「情報が確かならここら辺のはずなんだよ。ついて来てくれてありがとうね、グレイ」
「別にいいけどよー、いきなり口説いたりすんなよ?」


そんなことしないさ。とロキはコロコロ笑う。
本当だろうか。不安になる。
実際こいつはそこら辺にいる女子を見たり、視線が泳いでいる。

俺とロキが一緒にいる理由は、まぁ休日に友達と遊ぶという至極簡単な理由だ。
よく遊んでいる仲だからそこは不思議ではない。
今日もブラブラと街中を冷やかして回るつもりだったが、なんでもロキが贔屓にしているアイドルグループが近所で撮影しているらしい。

それを見逃さないロキ。
自然と俺も一緒にそのアイドルを探すことになった。
まぁ、俺は元々そういった類のものに全く興味はなく、会えたところでなのだが。

キョロキョロと不自然にならない程度に辺りを見渡す。
すると大掛かりな機械を持った軍団が見えた。
きっとあれだろう。


「ロキ、あそこじゃねー?」
「ん? あ、そうだよ! ナイスグレイ!」


早速行こう、と駆け出す。
どんだけ楽しみだったんだよ。
まぁ、でも好きなものを追いかけると誰でもああなるものなのだろうか。
苦笑しながらロキの後を追う。

だんだん近づいて行けば、二人の人物が見えた。


「今日はハルジオンに来てまーす!」
「ここって港だろー? 美味いもの一杯あるといいなー」


食い意地張りすぎ、とブロンドの少女がツッコミを入れた。
桜色髪の少年はそれを笑顔で返す。

瞬間………
俺の胸に何かきた。
ズッキュンってなんかきた。

暫し惚けていると、あー!と大きめの声に意識を戻す。
どうやら桜色の少年が発したようだ。


「お前ロキだろー? お前ここら辺なのか」
「あれ? ナツ知り合い?」
「何言ってんだよ。この間の握手会来てくれたじゃん」
「覚えてくれてたの? ありがとう!」


おう! と桜色の少年が笑う。
遠目でそれを見ていると更に俺の心臓は早鐘を打つ。

いやいやいや、ちょっと待て俺。
まさか本気であの少年を好きになろうってか?
やべーって。別世界の奴だし、そもそも俺もあいつも男だ。


ふと、桜色の少年と目が合った。


「あいつはロキの友達か?」
「ん? ああ、グレイってゆーんだ。そんなとこに居ないでこっちおいでよ」
「てゆーか、撮影中なんですけど?」
「いいじゃんいいじゃん。この二人に案内してもらおうぜ!」


なっ、と笑いながら俺の手を取った。

なんなんだこいつ……かなり可愛い。
笑った顔とか、天使じゃね。

鼻血が出そうになるのを気合いで堪えると、辛うじておう、と答えることができた。


「なっちゃんあのね、グレイってアイドルとか全然知らないんだよ。だから自己紹介したげてよ」
「あんた何人の腰に手あててんのよ」


ロキの言葉にそうなのか、としょんぼりして質問してきた。
罪悪感に襲われ、悪いと素直に謝罪した。


「まぁでも人の趣味ってそれぞれだもんな。俺は気にしねーよ? 俺ナツっていうんだ! あっちは相方のルーシィ。 よかったらこれから知ってくれたら、嬉しい」


にっこにっこ笑って、なんなのこいつ。なんでそんなに可愛いの。

今考えてることは顔には出てないはずだ。
多分。


「じゃあこれからデートしよっか」
「あーのーねー、撮影中なの! ここら辺に住んでるんなら案内してよ」
「できたら美味いもの食えるとこがいい!」
「(かわっ……!!!)」


子供のようにころころ変わる表情に素直に可愛いと思えた。

ダメだ、俺、ナツにハマった……。
もっと知りたい。
こいつのこと………。
もっと知ってもらいたい。
俺のこと………。







「今日はありがとうな。また会えたら嬉しいな!」
「うん。また会いに行くよ」
「いい加減腰の手、離してくんない?!」
「グレイも、よかったら、な?」
「あぁ、少しずつ覚えていくよ」


ナツとルーシィがワゴン車に乗り込んで、夢のような一日は終わりを告げた。
だが、未だに俺の脳裏に残るナツの笑顔。
また見たい、会いたいという欲望が生まれてくる。


「………ロキ、CDショップ寄っていいか?」
「もちろん。あ、DVDとかもあるよ。僕も持ってるやつあるから貸そうか」
「頼む。握手会とか、今度いつあるんだ?」








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