短編

□無遠慮でがさつな君は、
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心を開かない少女がエレン少年に絆(ほだ)される。

※名前変換なし



↓よければどうぞ





図書室で一人本を読んでいると、ふいに影が差した。

その影は私の方に体が向いている気がして顔を上げると、そこにいたのは翡翠色の双眼の少年だった。


少年はその翡翠色で私を見据えて、



「お前さぁ…笑わねぇの?」



と言った。



『……は、』



驚いた。本当に驚いた。

だって初対面でこんな質問をされるなんて思いもしなかったから。


私はこいつを知らない。
ただ、よく一緒にいる黒髪の少女に「エレン」と呼ばれているのを耳にする。



この人の名前は“エレン”
私の中にある情報はそれくらい。



「なぁ、なんで笑わねぇの?」

『…あなたには関係ないでしょ』



そう、関係ないこと。
私が笑おうが笑うまいが、知りもしない他人には関係のないこと。

そう思っていたのだけど。



「いや、関係あるね」

『え?』

「だって俺、お前のこと好きだから」

『……え?』

「笑ってるとこ見てぇもん」



待て、なんて言ったこいつ。
私が好き、って言ったの?



『意味が分からないのだけど』

「え?えー分からないのか、そうだなぁ」

『私が好きってどういうこと?』

「ん?そりゃ女として好きに決まってんだろ!」

『女として…』



それは、あれか。
恋愛感情か。



そう問えば、彼は「そうそう、そのレンアイカンジョウとか言うやつだ!」と笑った。

分かってるのかこいつ。



「まぁそんなわけだ」

『よく分からないけど、わかった』

「おう、いつか笑わせるから、そん時はちゃんと笑えよ!」



「じゃあなー」それだけ言って図書室を出ていく。

結局彼は何しに来たのだろう。

私を笑わせに来たのか、それとも告白しに来たのか。

考えても分からない。



ただ一つ言えるのは。



“エレン”は案外他人じゃないのかもしれないってことだけだ。





『…………ふっ』





そんなことを考える自分に何だか笑えてきて、思わず笑みをこぼした。



今の私を彼が見れば、彼もまた笑ってくれるのだろうか。





無遠慮でがさつな君は、

(私の心に土足で入り、ぬかるみを作っていく)





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