ゆらゆらる。
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あの日からだ。
マルコと話したあの日から、キーリと話しにくい。
別にキーリの態度が変わった訳じゃない。
相変わらずミカサの情報を教えてくれたり、相談に乗ってくれたりする。
“だってジャンはミカサが好きなんでしょ?”
マルコのせいだ。マルコがあんなこと言わなけりゃ、俺はこんな変な気持ちにはならなかった。
後で殴ってやる。
『ジャン君……聞いていたかい?』
「っ!!…は………え…?」
突然キーリに顔を覗かれ、反射的に顔を上げる。
見回せばそこは資料室だった。
ああ、そうか。
今まさに俺はこいつに相談してたんだった。
キーリはため息をついて『聞いてなかったみたいだね』と苦笑いした。
「わ、悪ぃ…」
『疲れてるんだろ?気にすることはないさ。今日の訓練はまた一段とキツかったもの』
「……」
『大丈夫かい?相当疲れてるね。相談はまた今度にして、今日はもう休むといいよ』
「……」
『ここは落ち着くからよく利用するんだ、人も来ないしね。だからまた今度にしよう?』
キーリは立ち上がり『それじゃ、』と資料室を後にしようとする。
待て、行くな。
俺はお前とまだ話してぇんだよ。
…ん?
なんで話してぇんだ、意味分かんねぇ。
それもこれもマルコのせいだ。
『おやすみ、』
「───おい、」
『ん?──え、』
無意識だった。
体が勝手に動いたんだ。
今俺の手は、キーリの手首を掴んでいる。
素直になろうよ
(俺はいつだって自分に正直なはずだった)
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