ゆらゆらる。

□03
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「よぉ」



開けっ放しの医務室のドアをノックし声をかければ、キーリは驚いた顔をしていた。



『ジャン君…なぜここに?』

「どっかのお人好しが皿の破片で指をザックリやってたからな」

『見てたのか。恥ずかしいな』



『はは、』と笑うキーリだが、例の傷からはまだ血が出ていた。脱脂綿で止血してんのにまだ血が出るってやばくないか、それ。

先生に診てもらった方が、と辺りを見回すが、それらしき姿はない。



『先生はいないみたいだよ』

「……役に立たねぇな」

『訓練時間外だからね、仕方ないさ』

「……痛いか、それ」

『ん?うん、まぁね。でもこれくらい大丈夫さ』



あ、こいつ馬鹿だ。
こんなに血が出てんのに大丈夫なわけがねぇんだ。多分深く切ってる。ちゃんと消毒しないと膿んで後悔するぜ、きっと。

依然血の止まらないキーリの指を見て、顔をしかめた。



「ちょっと貸せ」

『お?』

「少し痛いぞ」

『いや、いいって……痛っ、』



脱脂綿を半ば強引に奪ってキーリの指を圧迫する。



「こういうのはな、ちゃんと手当てしないと後悔すんのはお前だぞ」

『……』



なんだこれ。何してんだ俺。俺はこいつの母親か。
違う、断じて違う。
ただこいつがあまりにもお人好しで馬鹿だからだ。

つーかキーリ黙るなよ。気まずいだろ。



「……何とか言えコラ」

『“何とか”』

「ふざけてんのか?」

『いっだだだだっ!!ごめん、悪かった!悪かったよ!!だから指に力を込めないでくれ!』



指の痛みから必死に許しを乞うキーリに、指の力を緩めるとキーリはため息をついた。

そしてその後『あっ、』と声を上げる。



『血、止まったみたいだ』

「……そうらしいな」



脱脂綿を取ってみれば、キーリの指の血は滲む程度まで止まっていた。

消毒をして、絆創膏を巻き付ける。



『……手際がいいね』

「そうか?普通だろ、これくらい。……ほら、できた」

『……ありがとう』



キーリはふわりと笑った。
…面と向かって礼を言われるのはこんなに恥ずかしいものだったか。
照れを隠すために顔を背け、「うるせぇよ」と言っておいた。

案外俺もお人好しかもな。



『お礼にミカサのとっておき情報を教えてあげよう』

「……何だよ」



プライドがそうさせるのか、興味なさそうに、できるだけがっつかないように。顔を背けたまま問う。



『ミカサのスリーサイズだ』



俺は正面を向いた。





協力は忘れない

(でもそのネタはずるいぜ)






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