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□君の体温。
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「なぁなぁ名無しの!眼鏡貸して!」






ーーー1限目が始まりそうな頃、隣の席の田島くんがそう言ってきた。




『眼鏡?』

「うん!名無しのってさ、授業中だけ眼鏡かけてるだろ?」

『あ……うん。』



特別目が悪い訳ではなかったけど、席が後ろになったのをきっかけに、私は眼鏡をかけるようになった。




「なぁなぁ!貸して!」

『うん………はい。』

「あんがとー!」




そう言って、彼は私の眼鏡をかける。




「あれ?…そんな変わんない。」

『あぁ。それ、そんなに度入ってないから。』

「ふーん。ーーーあっ!」


何か思い付いたように、私の眼鏡をかけた田島くんが私を見て言った。



『ん?何?』

「これさ、1時間目だけ貸してくんね?」

『え………。』



正直、後ろの席だから見えにくくなるんだけど………



「お願い!貸して!」




そんな顔で言われたら、断れないよ。




『うん。いいよ。』

「あんがとー!……名無しのなら貸してくれると思った!ゲンミツに!」


ゲンミツの使い方おかしいけど……




『じゃあ、休憩時間に返してね。』

「おう!」



ーーこの時私は、次の休憩時間も田島くんと話せると思って、少しドキドキしていた。







キーンコーンカーンコーン。







1時間目のチャイムが鳴り、授業が始まった。





私は田島くんが気になり、隣を見ると…いつもとは違い、寝ないでちゃんと授業を受けていた。




その横顔に、私はまたドキドキしてしまっていた。






ーーーーーー。






そして、あっと言う間に授業が終わった。






「名無しの!眼鏡あんがと!」

『あ、うん。』


そう言って、私が眼鏡を直そうとするとーー


「あ!待って!」

『……?』

「今かけて!」

『え、何で……?』

「いーから!今かけんの!」



私は言われるがまま、眼鏡をかけた。





すると、さっきまでかけていた田島くんの体温が伝わり、またドキドキしてしまうーー。



「なぁ。」

『………?』










「……俺の体温伝わった?」

『?!///////』




え、何言ってるの?//……私の頭がパニックになる。顔が赤くなるのが、自分でも分かる。





「伝わったんなら、良かった!」



そう言った後、無邪気に笑ったかと思うとーーすぐ席を立ち、野球部の人達のところに走って行ってしまった。








私は、まだ体温の残った眼鏡を、授業が始まる前も後も 、付け続けていたーーー。









田島くん。体温……ちゃんと伝わりましたよ。








end


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