第1話「入学式での出会い」

私は、声がない。
いや、小学生の頃に、声を失ったのだ。
ある事がきっかけで。

私は…
手があって物を掴める。
腕があってバットなどを振れる。
足があって走れる。
耳があって聞こえる。

なのに、声だけがない。
人と会話が出来ないのだ。
私との会話は、相手は普通に喋るけど、私は紙に書いて会話するのだ。
人はそれをおかしいと言うのだ。
それに、私の髪と目の色は、赤色。
だから人は、私に‘虐め’という行動をとるんだ。

小学生の頃は毎日虐められる日々だった。
先生も誰も助けてくれない。
両親に言ったら校長に訴えてくれた。
しかし、校長は信じてくれなかった。
そして、いきなり私の両親は死んだ。
事故死だそうだ。
両親は即死。
私だけ生き残った。
その時、私は声を失ったのだ。
あと、記憶も。
感情も。


中学生になった。
両親が死に、叔母の所に預けられたが、叔母も5ヶ月前に病気で亡くなった。
預かり手がないから、そのまま叔母の家に住んでいる。
もちろん一人で。
叔母は金持ちだったようで、家も広い。
ある意味、私の家系は凄いのかもしれない。

もう、虐められないようにと、黒髪ロングのカツラをかぶるようにした。
目は黒のコンタクト、赤い眼鏡をつけた。
カツラの髪を下で三つ編みに。
もちろん二つ。
そしたら、クラスに一人はいるであろう、地味女の出来上がりだ。
そして、私は帝光中の門をくぐる。

私のクラスはA組らしい。
A組には、赤髪の人と緑髪の人がいた。
珍しいな…と思ったが、私も人の事言えないと思い出した。
隠してはいるが、私も赤髪なのだから。
どうやら今日は、入学式と自己紹介で終わるらしい。
授業は明日からと説明があった。

入学式が終わった。
新入生代表は、赤髪の人だった。
私と彼は同じく1位で入学したが、名前順で新入生代表は彼に決まったらしい。
まぁ、別にどうでもいいのだが。

クラスにいくとすぐに自己紹介が始まった。
席は来た人から好きに座っていい事になっていて、席順で自己紹介することになった。
最初は赤髪の彼だった。
名前は、赤司征十郎と言うらしい。
緑の髪の彼は緑間真太郎と言うらしい。
最後に私の番が来た。
「私の名前は、##NAME2##と言います。
これから一年間よろしくお願いします。」と書いて見せた。
別にクラスの人と仲良くするつもりは無い。
きっと、クラスの人達も 私をあいてなどにはしないだろう。
だから、苗字しか書かなかった。

そしてすぐにチャイムが鳴り、今日はこれで終わり。
クラスの人達が帰ったら帰ろう。
なんか、いやだから。
そう思ってると、すぐに人はいなくなった。
体験入部に行ってるんだと思う。

少し時間が経った頃、クラスには誰もいないと思っていた。
思っていた、とは、私がヘッドフォンをしていて気づかなかっただけ。
体験入部は明日からだってことに。
まだ、人が残っていたことに。

「##NAME1##さん。」
呼ばれた気がした。
いや、絶対に呼ばれた。
でもおかしいのだ。
だって、私は…

「無視なんて酷いじゃないか、##NAME2####NAME1##さん″。」

苗字を名乗っていないのだから。

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