V
□約束
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僕は椅子に座っている
僕の椅子の前には、もう一つ椅子がある。
その椅子の上には、人形が座っている。
いや、人形ではない。
金色の髪をしたまるでフランス人形のような小さい女の子だ。
その子がまばたきをした。
やはり人形なのかもしれない。
「約束よ。」
そう言って小さな手の小さな小指を向かい合っている僕の方に突き出した。
「指切りしましょう。」
僕も小指を出す。
「ゆびきりげんまん。うそついたら――。ゆびきった。」
そこで夢から覚める。
『誰かと約束をする夢』だ。
もう何回見ただろう。
いつも気がついたらあの子がいて、決まって指切りをした後に目が覚める。
まず何を『約束』したのか覚えていない。
とノートに書き残されている。
私はノートを閉じた。
彼は何処に行ってしまったのだろう。
この部屋には、ぽつんと椅子が一つ置いてあるだけだ。