執事たちの部屋

□福山Butler
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世界の大富豪の一つに鷹島グループがある。
ホテル、レストラン、遊園地、他にリーズナブルで庶民に親しまれるブランドやブライダルプラン、などを兼ね揃えた巨大財閥には、見目麗しい令嬢がいた。




【初夏の恋路】





「暑いわ...」





車の窓を全開にしてうだるような暑さから逃れようとする栞。

30℃近くにもなるのに、車のクーラーが壊れるという惨劇。栞は睨むようにしてルームミラーを見た。
運転するのは、栞の執事である、福山雅治だ。栞の生まれた時から執事として働くベテランだ。




「お嬢様、何か?」




響くバリトンボイスにゾクッとしながら栞は文句を言う。




「車のメンテナンスいつもしてるのに何で今日に限ってクーラー効いてないのよ!」
「そう申されましても...」
「ったく、暑くて暑くてプレゼン行くまでに汗だくになっちゃうじゃない」




そう言って、胸元のボタンを一つ開く。「おっ」と目を見開く福山。




「お嬢様、怒らないならお答えしますが、」
「何を」
「クーラーが壊れた理由でございます」



答えなさい、と脚を組み替える栞。短めのタイトスカートから肉付きの良い足が動く。



「クーラーは実は壊れておりません。本当はガンガンに効くのでございます」
「じゃあ付けなさいよ」
「嫌ですね。」
「は?」
「付けてしまえば、風でなびくつややかな髪も、暑さでうだる表情も、我慢ならずはだける胸元も見えなくなります」
「あんたルームミラーでどこまで見てんのよ変態!!!」
「何をおっしゃいます、私は、お嬢様のしか興味がありません」
「私が生まれた時から世話しといてその発言やばいでしょ!変態!ばか!」






グッと胸元を閉じ、窓を締め、髪をくくり、脚を組み替えて「クーラー付けなさい!」と叫ぶ栞。





「はい、お嬢様」





脚の組み替えは言わなくて良かった、とホッとする福山だった。





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(お嬢様のすべてを知る、この福山にお任せ下さいね)
(言い方がイチイチやらしいのよ)
(そのつもりですが)
(変態!)
 

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