夢小説。そして……

□ごめんなさい。
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「きっとアイツは後悔してる。行ってやってくれるか?」

本当に優しく、花でも扱うみたいにソッと私の肩をもって離したビスタさんは
目線でその“アイツ”を指して送り出してくれる。

暗がりなのに良く場所が分かるものだな……と一瞬頭に思いながら
そちらに向かって歩き始めた。




鼓動が無駄に早くなるのを感じた。
さっきの再会の事もあるし…
ずっと思い続けてた“裏切り”という不安もある。

マルコさんは結局私と別れるその時も何も聞かなかった。でも、勘の良い彼なら何か悪いことが起こるんだと察してはいたはず。
言わなかった私が絶対的に悪い。
サッチさんの事も
エースくんの事も
親父さんの事も……

マルコさんの重荷にはしたくない。
責任感だけは強い彼のことだから
きっと自分も責めるだろし
その責任を私に転嫁してくれるなら……
そのために来たのだから。

鼓動を押さえつけるように
大きく深呼吸しながら歩いた先に
彼のボロボロの背中が見えてきて

こちらを向いていないから
緊張せずに距離を縮めて行けた。

近くにはイゾウさんがいて、
一緒に飲んでいる様だったけど
私を目線だけで確認して
ふらりと他のクルーのもとへと行ってしまった。

気を利かせたつもりなのだろうが
気が重い。


何と話しかけて良いものかと
数歩手前で止まったまま
刹那の時間が過ぎた。
波の音だけが穏やかで
彼の背中が月の光りに照らされて
コントラストが美しく
違う意味でまた鼓動が早くなった。

不謹慎な。

一人、頭のなかで突っ込むと
彼が不意に振り向いた。

全然心の準備とかできてないから!!



彼は普段から眠たげな瞳をこれでもか!と見開いてフイっと背中を向けた。

これはもう全身で拒否されていると捉えるべきなんだろうか……
躊躇しながら
どうするべきか戸惑うと、
彼は小さな小さな声で

「こっち来いよい」

と言って、
それは小さ過ぎて波の音にかき消されるほどだったから、つい……

『え?』

聞き返したら
イラっとしたらしい彼が
怒り口調で

「こっち来いよい」

と繰り返した。
本当に怖いです。ごめんなさい。

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