夢小説。そして……

□目的を。
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パンッ!

大きく一つ打ち鳴らされた拍手。
静かな夜にひときわ目立って
周りの人の目をその音の方へと向かわせた。

へらりと笑ったシャンクスさんは
彼なりに複雑そうな笑顔で
「しけた顔してねぇで、ほら!飲め!食え!!」
と周りにあった食べ物や飲み物を
白髭のクルーに渡して
なんとか場を盛り上げようと促し、
それにならって
シャンクスさんのクルーも音楽を流すなり
話しをするなりして……
最初は小さな音だったけど
徐々に祭りのような賑わいに移っていく。

「あぁ。それで良い……」

ホッとして
シャンクスさんは私の方へと足を進め、
そしてクルリと私を巻き込むように反転して
横にピッタリとくっつき
額に唇が付くほど近くまで顔を寄せた。

相変わらずセクハラ紛いのおっさんに
反射的に体を反らすと
抵抗させまいと腕一本で引き寄せられた。


「辛かったよなぁ……お前はずっと前から、こんな事知ってたんだもんな」

つい自分の口を手で覆って
目線を伏せた。
罪悪感ばかりが押し寄せて
引き剥がしたかったけど
それでも彼はその力を弱めなかった。

「前にお前がこの場所を聞いた時、意味も分からなかったんだが……ここに来る間にふと思い出して寒気がしたよ」

彼は優しく私の頭を撫でて
私の額にそっとキスをした。

ギョッとはしながらも
彼の目を見ると私の気持ちを透かしているようで
どうしても拒めなくて……



今シャンクスさんに身を委ねたら
きっと楽だろうとも思いながら

でも背中を守ってくれてる力強さを感じて
私がしたかったことを思い出し、立ち上がる。

今はシャンクスさんに甘えている時じゃない。
きっと私はこの日のためだけに
この世界に来たのだから。


強く決心して
シャンクスさんに『ありがとう』とだけ言うと
彼は何でも分かったような顔で
手を放して私を解放した。



見渡せば誰がどこにいるかくらいは
分かる距離だから
キョロキョロと目的の人を探すけど
人混みの中で案外簡単には見付からず

一人一人確認するように
探して回ることにした。

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