夢小説。そして……

□結局。
1ページ/1ページ



「何もかも知ってたんだろい!!!」

強く握られた肩が痛くて…
痛さを通り越してただの熱に感じた。

激しくぶつけられる気持ちは
彼のやりきれない思い。
不死鳥なのに
いまだに消えない傷を見て
自分の痛さに重ねた。

「何でだ!!!何で言わなかった!!!」

何でだよい……
揺さぶられながら何度も呟く。
彼の手に込める力がどんどんと強くなった。
私はされるまま
それを耐える事しかできなくて……

それを見かねたビスタさんやハルタさんが
無理に引き剥がして止めた。

皆言葉はなかったけど
一様に辛さを噛み締めているのだけは分かっていた。

幾人かが私に悪意を持った眼差しを向けているのに気づいて
それをじっと見つめ返すと
彼らは目を背けた。



白髭のクルーがひとしきり降り立つと
最後に大きな棺と小さな棺がそれぞれ重々しく下ろされ
それを通すために誰からともなく道を開けた。

島の中央
私がよく彼らを思って海を眺めたその場所に
皆で大きな穴を掘って
それから埋葬し、お墓が作られた。

涙するおっさん達は
自分達の得物を地面に突き刺し、
似合わない可憐な花を
その回りに手向けた。


徐々にそこは
見覚えのある景色へと変わっていって

そして夜を迎えた。


シュンとした雰囲気を誰かが払拭する訳でもなく
自棄を起こすクルーは酒を浴びるように飲んでいるし、

墓の周りを囲うように揃った隊長達も
それぞれに内に葛藤を覚えたようで
黙って酒を仰いでいた。

私は遠くからその背中を眺めて
ジンジンと痛む肩を押さえた。


分かってはいた。こうなることは。
それを覚悟して
あの時言わなかったし
その時が来たら私にできる全てをしようと思った。


でも結局
私には何もできないし、
今もマルコさんのあの目が怖くて
彼等に近付くことさえ躊躇している

今になって後悔してないとは言い切れない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ