夢小説。そして……
□約束の場所へ。
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それから
また何日かが過ぎた。
その訃報はニュースクーを見れば事実だと分かった。
それを見てすぐに
働かせてもらってたお店にはお礼を言って
これから働けなくなるのだと告げた。
そして暫く海の線をぼんやりと見ていると
彼は律儀にも
やってきた。………自転車で。
「よーぅ!待たせちゃったかな」
緩い口調の彼は片手を上げて私に語りかけた。
私は複雑過ぎて言葉を出せないまま
ただじっと近付いてくる彼を見つめるだけ。
傍らにまで近づいて、やっと
『クザンさん』
と名前を呼んで彼を見上げた。
「女の子との約束は破らない主義でね。こんな早くにサッチが逝くなんて思ってもなかったからなぁ」
彼は勿論、海賊の私達から言わせれば敵側の人間だから
その訃報を本当に軽々と伝えて
そして私を自転車の後ろの席に座るように促した。
「本当はもう忘れかかってた約束だったし、まさか本当にそうなるとは思っちゃ無かったんだが……さ〜て?望む場所まで連れてってあげようかね」
案外律儀な彼に小さな声でお礼を言うと
海に向かって大きくペダルを踏み込んで
ゆっくりと海面を進んでいく。
向かう先は
シャンクスさんに教えてもらった場所。
あの海賊団の最後の場所。
そこに必ず彼らが来ると
私は知っている。
自転車は思ったより早かった。
そりゃあ気ままに風任せの船旅じゃないから、それなりにスピードはあるし…流石の脚力はバイクにひけをとらないと感じたくらいだった。
幾日かかけてログが指す先に到着した。
そこは平地で見渡す限りの草原だった。
じんわりと胸が熱くなって…
手を握りしめた。
「ンで?なーんもないけど本当にここであってんのかい?」
クザンさんは額に手を当て、一周ぐるりと見渡してから
私の方を見た。
私はコクりと首を縦にふって
それから彼がしたように周りをぐるりと見渡した。
彼には見えない光景が私には見えている。