夢小説。発展

□その理由。
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甲板に上がると、まだ靄がかっている冷えた空気。

ハァと息をつくけど
口から出たそれは白く棚引く事はない。

こんなに寒いのに………おかしい。
今日は船の揺れもいつもより大きく感じてよろけて壁にもたれかかった。

あれ…………?
ホントおかしいな………体。

ズルズルと体は壁にそって下がっていき
へたり込む形で床に足をつく。

重い体を無理に動かして
壁を背に座り込むと
目を閉じて天を仰いだ。

こりゃあ完全に風邪だ…………。
道理でクシャミで目も覚める訳だよ………。

身動き1つできずに

そのまま意識を手放した。





「何やってんだい?風邪ひくよい」

その手は私に向けたものじゃない

手前にいる女性に差し出されたものだ。
顔は確認できないけど
その人は小柄で華奢で
綺麗なブロンドのウェーブがかったロングヘア
きっとマルコさんが選んだ相手なんだから可愛いに違いない。

彼の笑顔が眩しくて
私は下を向いたまま
身動きができなかった。


そんな状況でこそ思い知る。

私が一番振り向いて欲しい人を。


手を伸ばした先に
既に彼は…………………………いない。





「大丈夫かっ!?」

白を基調とした部屋のベッドに私は横になって

手を真っ直ぐ伸ばして泣いていた。

真横に居たのはサッチさんだ。
彼は私の手をしっかり握り締めて、心配そうに顔を伺い見る。

「うなされてたよ!?ホント大丈夫? ***チャン 」

「大丈夫な訳ないでしょ!?熱があるんだから」

横から婦長さんが氷枕を抱えて私の側まで来て手際良くソレをセットする。
婦長さんは優しく、無理しちゃダメよ?と私に念を押すと
部屋を出て行った。

「ビビったぜ……朝いつもみたいに部屋に行ったら居ないもんだから、探してたら外で寝てるし、熱あるし!!」

とにかく安静が一番!!
そう言ってサッチさんは横の椅子に座ったままニコニコしていた。

『……………仕事は……』

あー。そんなん気にしなくて良いから!と言うサッチさんが仕事行かなくて良いのか。むしろ私はそっちの心配をしているのだが…。
彼は全く動く気配がない。

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