忍びの世界
□過去の物語
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それは、雪が降る満月の夜だった…
「頑張れ千春!!もう少しだ!!」
ザクザクと地面に積もる雪をかき分けながら走る千夏は後ろを振り返り自分の片割れに声をかけた。
「待って千夏!!あまり激しく動くとこの子が死んでしまうわ!!」
千夏の後ろを走っている千春は腕の中にいる小さな身体を抱きしめながら前の兄に声をかけた。
「追っ手は来ていないがばれるのは時間の問題だ!!それより先に3代目様かうちは一族のところに行かなければ俺たちは殺されるんだぞ!!」
千夏は辺りに気配がないことを確かめ
千春の傍によった。
「くそっ!!木を渡って行ったほうが速いんだが…」
千夏は千春の腕の中にいる赤ん坊に目を向けた。赤ん坊は自分の姉に身を寄せたままスヤスヤと眠っている。
「この子は俺たちが守ってやらなきゃいけない…それが、父さんと母さんとの最後の約束であり、兄である俺の意志だ…」
もちろんお前も。と千夏は千春に目を向け前へと向き直った。