その他の物語り
□ぬら孫〜娘編〜
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「霞〜、こっちもたのむわ〜」
『あ、はーい!!そこに置いといて下さい!!』
すまんな〜!!
そう言い駆けていく仲間を見送ったあとは溜め息をついた。
『人手が欲しい…』
霞の後ろには大量の洗濯物が置かれており霞は再び溜め息をついた。
『(まあ、いいか…)』
よいしょと籠を持ち上げ苔でヌルヌルになっている崖を登って洗濯物を干しに行く。最初やってたころより遥かに上達した自分を誉めながらも油断はしない。
『そういえば、あの娘達は元気かしら…』
ふと思い出すのは二人の人物。
自分を姉と呼び慕ってくれた少女とその少女の何代か前の先祖の代から仕えているという頑なな青年。
彼らがこの里を出て3年が経っている。ついこの間届いた手紙によると二人とも元気で過ごしていると書いてあり、皆で手紙を自分が読むんだ!!と取り合いながらも回しながら読んだのがもう、懐かしい気がしてきた。
『(そういえば…本家の嫡男もソロソロ…)』
ふと回想にふけり過ぎたためか緊張が緩み足がツルリと滑った。
『え…?』
フワリと宙を浮かび、落ちていることに気づいたがもう遅い。
『(不味い!!早く体勢を立てとかないと!!)』
何度も落ちていた分、痛みは身にしみついている。しかし、手にはまだ洗濯物の残りがある。
『(ぶつかる!!)』
ギュッと目を瞑り痛みに耐えようとしたとき
ポスリ
「お前、相変わらずトロいな。」
地面ではない感覚とどこか呆れた声に恐る恐る目を開けると仏頂面のイタクがいた。
『イタク…』
少し目をぱちくりさせ名前を呼ぶとイタクは溜め息をついた。
「洗濯物ぐらい洗い直すことできるどろ。」
なにを考えてんだか…と溜め息を再びつくイタクから下り霞は苦笑いした。
『だって、この中にはイタクの分も入ってるし…アタッ!!』
言い訳をしているとデコピンをされ片手で額をなでる。
「お前がケガしたら皆が心配するだろうが。」
不機嫌ながらも言われる内容はとても温かく霞はクスクスと笑った。
「…にしても珍しいな、お前が彼処から落ちるなんて。」
崖を見上げながら言うイタクに霞は苦笑いをした。
『理世ちゃん達の事を考えてて…』
ボソボソと言う霞にイタクは少し微笑みながら彼女の頭に手を乗せた。
「あいつらなら大丈夫だ。俺達が直々に修行を付けてやったんだからな。」
『物凄くスパルタだったみたいだけどね…』
女の子なのに生傷だらけになって帰ってくる少女の手当てをしていた霞はまたクスクスと微笑んだ。