夢であり、現実であり、そして恋でした

□別れはすぐそこに
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ーまったく、どうかしてる。


目の前を歩く二人の背中をボンヤリと目に映しながら真冬は呆れを顔に出す。しかしそれが届くことは無い。
いや、別に届かなくてもいいのだ。伝えたい相手は彼女達では無く、こんな場所にのこのこと付いてきた自分なのだから。

止むことを知らない昼間のこの場所は考える事を阻止する。お陰でなぜ自分がここにいるのかすら、よく覚えていない。疲れ切ったような自分の身体のダルさを感じるあたり、任意じゃないことは確かだ。
人と人の間でチラホラと二人の横顔が見える。何を話しているのだろう。これから買いに行くケーキの話でもしているのだろうか。一人で決めればいいのに。私なんて必要ないだろうに。


「あ、あか。ぼくしってるよーあかはとまれ、でしょ?」
「そうよ、こうちゃんよく知ってるわね」
「みのりせんせいがおしえてくれたー」


親子の会話に足を止めた。真っ赤に染まる丸を自身でも確認し、小さな安心感に浸る。それもつかの間向こうの道に彼女達を発見しあ、と声を漏らしてしまった。

待って。そう開こうとした口をそのままに止まる。別に、要らないんじゃないだろうか。二人は気付いていない。このまま帰ってしまっても、きっと…


「っ、!」


視界が大幅に揺れた。倒れそうになる足を支え、なかなか焦点の合わない目で何が起こったのか確認。すると二人がこちらを見ているのがなんとか分かった。その表情に先ほどの笑顔は無く、目を見開いて固まっている。

それに疑問を抱いた時、今まで気にしてなかった音に耳が機能した。焦ったような声に、叫んでいる声。ぜんぶ、稀にない大きな声だ。


「おいあんたー、」
「なにしてるんだはやくー」



なんとなく、横を見た。本当は見たのかどうかも怪しいのだが、私にはそれを判断する何かをどうしても思い出せない。頭に浮かぶ横の様子は私の想像だろうか。それとも本当に見たものなのか。

今更ああだこうだ言っても、もう遅かった。ただ私が覚えているのは身体中の痛みと見たことの無い顔をする二人だけであった。

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