ブラコン
□お菓子をくれなきゃ…?
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「あれ?あーちゃん、一人?」
夕方、僕が5階の共有スペースで一人コーヒーを飲んでいると、仕事帰りなのか袈裟姿のかな兄が僕に近づいてきた。
「うん。今は僕しか家にいないよ。」
「そっか。そーいえば、ハロウィンパーティー中止になっちゃったもんね。人少ないのは当然か。」
10月31日、今日はハロウィンだ。
毎年、この日には兄弟みんなで集まってハロウィンパーティーをするんだけど…今年はみんななんだか忙しいようで中止になってしまったんだ。
「毎年あんなに賑やかだと、今年はすごく寂しく感じるね。」
「そう?僕は静かで落ち着いてるのもたまにはいいと思うけど。」
本当に家の中は静かだ。
兄弟が全員揃うのは滅多にないけど、大抵は5、6人はいる。いつも行動を共にしている椿もいないし、僕とかな兄だけしかいないなんて、これが初めてじゃないかな。
「……」
沈黙が流れる。特に話すこともなくなった。
あと少し経ったら適当にご飯でも摂って台本読みの練習でもしよう、そんな予定を立てながらコーヒーを飲み終えた。
「…じゃあ、僕は部屋戻るから」
「え〜?俺を一人にする気〜?」
「一人にする気…って子供じゃないんだから」
僕が席を立つと、かな兄はいきなりそんなことを言った。
「なんかしよーよ。つまんないじゃん」
「そんなこと言ったって」
「はいはい、つべこべ言わずに。」
かな兄は強引に僕を引き止めた。
「あーちゃん、Trick or treat.」
この言葉が僕の予定を狂わす呪文となったのだ。