短編小説

□一人の夜
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「おーい、次はわしに注いでもらえんかのう?」


「あっ、すぐ行きます!」


「姉さん、その次はおれのとこに来てもらってもいいですか?」


「うん、いいよ。ちょっと待ってね」


今日はわたしのお世話になってる寺田屋で宴会が開かれていた。

明日はお祭りだから、今日は皆でわいわいと夕食を食べている。

正直、ちょっと眠くなってきちゃったけど、片付けもあるから、わたしは宴会の場から離れずにいた。


「ふぅ…皆よく飲むなぁ…」


お酌もひと段落して、わたしは甘酒を飲みながら、ふぅと一息つく。

お酒、かぁ…。

そういえば平助くんがお酒飲んでるとこ、
見たことないな。

お酒強いのかな?

…うん、強そうかも。

少なくとも弱くはなさそう!

平助くんが酔ったらどうなるんだろう?

……あれ?

なんでだろ、
私平助くんのことばっかり考えてる。

ここに平助くんはいないのに…。


「おい」


「あ、以蔵」


以蔵の声ではっとする。

いけないいけない、ぼーっとしちゃってた。


「お酒注ごうか?」


「いや、いい。お前そろそろ寝た方がいいんじゃないか?眠そうだぞ」


「うん、でも後片付けもあるし…」


「この調子じゃ片付けまではしばらくかかるぞ。

お前はもういいから寝てろ」


申し訳ないなぁ…

でもこのままだともしかしてわたし、ここで寝ちゃうかもしれない。

そしたらますます迷惑かけちゃうもんね。

ここはお言葉に甘えて戻らせてもらおうかな。


「ごめんね。ありがとう、以蔵」


「…」


なぜか固まる以蔵。

顔赤いのは、お酒のせいかな?


「以蔵?」


「…い、いや、何でもない。じゃあな」


「うん、おやすみなさい」



そう言って、そっと部屋を後にした。





自分の部屋に戻って、懐に入れている匂い袋をとりだす。


ふわりと平助くんの香りがして、胸がきゅーっと締め付けられた。


「…平助くん…」


寺田屋にいるという事もあってたまにしか会わない、

新撰組の男の子。


なんで、
なんでこんなに胸が締め付けられるんだろう。


「…会いたい、会いたいよ…」


こんなにも誰かが恋しくなるのは初めて。

今は何してるんだろう。

何を考えているんだろう。

ちょっとでもわたしのこと考えてくれてるかな…。


「平助くん……好き…」


小さく呟いた、一人の夜。













―――以下あとがきです!―――






恋するとこんな感じになりません??///←


平助くんの嫉妬はよく書くけど、

小娘の嫉妬とか恋焦がれてるところって抜かしがちかもと思って書いてみました。
 

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