短編小説

□夜はこれから
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―中岡慎太郎side

なんで。

なんで姉さんがこんな時間に龍馬さんの部屋に。

姉さんの声が聞こえてからすぐ龍馬さんの部屋の近くに行って話を聞いていたから別に何もなかった、
という二人の言葉は全く疑ってはない。

ないけれども。

龍馬さんの赤面した顔と何やら楽しそうに話してる姉さんを見てると何か気分が落ち着かなかった。

「はい、慎ちゃん、お茶」

「ありがとうございます」

「あの…慎ちゃん……。なんか怒ってる?」

恐る恐るおれに尋ねる姉さん。

「はい」

素直に答える。

怒ってないなんて言う余裕はなかった。

「ごめん…」

「なんで怒ってるか分かります?」

「………先に龍馬さんにお茶出したから?」

「…違いますよ…。
こんな夜遅くに龍馬さんの部屋に行ったからッスよ!
どういう事か分かってるんスか!?
だいたい姉さんはいつも自覚がなさすぎるんス!
もっと考えて行動しないと―」

一回口を開くとどんどん言葉が漏れていく。

一気に気持ちが溢れだす自分に少し戸惑いながら、ふと顔をあげると、
姉さんは目に涙をいっぱいに溜めていた。

「慎ちゃん、ごめん、なさい…」

「あ…姉、さん」

「私何も考えないで…集中して仕事してるの邪魔して…迷惑だったよね…」

まだ誤解してる姉さん。

いや、そっちじゃないんスけど…!

「本当に…ごめんっ」

そう言って姉さんは部屋から出ていこうと立ち上がる。

「ちょ…姉さん!!」

おれは姉さんの腕をを掴んで、
そのまま抱き締めた。

「し、慎ちゃん…?」

「違う。違いますよ。
迷惑だって話じゃないんス」

「えっ、違うの…?」

「つまり、言いたいのは…
姉さんをこういう風にするのはおれだけにしてほしいって話で…」

そう言いながら姉さんを強く抱き締める。

「え…??」

「他の男に渡したくないんス…。
夜部屋に行くって事は何か特別な感情を持ってると思われるから…だから、嫌だったんスよ」

「そうだったんだ…」

「この前姉さん、
おれが好きって言ってくれましたよね…?」

「うん」

おれは姉さんのおでこに自分のおでこをくっ付けて、姉さんの目を見つめた。

姉さんの目があんまり綺麗で、
自分の顔がどんどん赤くなってるのが分かる。

「おれも姉さんが好きッス…。
だから…だからおれだけを見て」

それを聞くと姉さんは真っ赤になった。

「…うん、分かった…」

その答えを聞いておれは姉さんの顎をあげ、
自分の唇を姉さんのに重ねた。

「さぁ、まだ夜はこれからッスね?」




END
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