NOVEL(長編)

□セカンド・ラブ3
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「松兄ぃめっちゃ上機嫌だねー何かあったの?」
「ん?」
翌日。TOKIOとは別の部屋で仕事をしていたのか、休憩中に廊下でたまたま大野と行き合った。開口一番、のほほんと悪気が一ミリのない彼の指摘に、松岡はきょとんとなった後つい反射的に口を覆った。
あ、ヤバイにやけが止まらないかも。
「てか先輩に会って挨拶もなしにそれかよっ」
「あでっ。だぁって珍しいじゃん松兄ぃがそんな顔ゆるゆるにしてるの。あ、分かった何かいいことあったんでしょ?」
「ん?んーまあなぁ」
今日は仕事に来てから浮かれっぱなしなのは自分でも自覚しているけど。すると大野は心底安堵したように大きな笑みを浮かべた。
「よかった、松兄ぃが元気になって」
「え?」
「だってこの頃めっちゃ落ち込んでたし、前よりだいぶ痩せたしオイラたち心配してたんだよ松兄ぃのこと。ご飯誘っても来ないし」
「最後が一番の本音だってのはよーくわかったよ馬鹿野郎」
確かに大野の言う通り、つい最近は結構酷い自覚もあったから否定はしない。普段は可愛い後輩も家で癒してくれる愛犬も楽曲もドラムも俳優業も何もかも目に入らないほど、胸もズタズタに裂けて頭もぐちゃぐちゃに踏み荒らされてそれはそれは想像も絶するような落ち込みようだった。
 けど、今は違うと自信をもって言える——この世界に光が射し込む今はもう、大丈夫だ。
「サンキュな、大野」
にかっと笑って大野の頭を乱暴に撫でれば、松兄ぃ痛いと情けない顔をしつつも大野は嬉しそうに首を竦めた。
「じゃあさじゃあさ、傷心な松兄ぃが治ったならさ、快気祝いってことで今日呑みに——」
「松岡ぁ」
目をキラキラさせてそう大野が迫ったところに、背後からやんわりと呼ぶ声がした。振り返れば、城島がとことことやってくるところだった。あれれ何だかやけににこにこしてるのが恐ろしいな、と大野は気付いたが謎の圧力がかかってきたので賢明にも黙っていることにした。
「あれ、リーダーどうしたの?」
「休憩そろそろ終わるし、迎えにきたんよ」
「あーたはオカンか、茂子か!!」
「茂子ちゃうあれは別人や」
「真顔でキリッと返されても反応に困るわ」
べちっとついいつもの勢いに任せて額を叩けば、痛いやんとやっぱり情けなさそうに城島が嘆く。何かデジャヴじゃないかこれ。嵐といいTOKIOといい、リーダーって何ぞやと両リーダーが揃ったところで松岡は心の中でぼやいた。
「あ、松兄ぃもう行くの?」
「悪いな大野、今日はちょっと先約済みなんだ。だから呑み会はまた今度なー」
「ほな行こか松岡」
「あっちょっと待ってよ!!」
さっきよりさらににこにこしながら、半ば松岡を引きずるようにして城島が早足に彼を連れていく。待たなーと気前よく手を振って追いかけてる松岡を見送りながら、大野は日だまりの猫みたく、
「・・・・・・茂君てホントに昔から松兄ぃに対して独占欲強いよねー」
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