NOVEL(長編)

□セカンド・ラブ
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見つめられるその眼差しの強さが余計に正常な思考を掻き乱し、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られてしまう。
「か」
視線を反らし、声を絞り出して、
「帰って、いきなりそんな事言われても気持ちの整理がつかないから・・・・・・」
震えてちゃんと意思が伝わったかどうかも分からない。だが、手まで振りほどく気になれない。とにかく怖い、怖い、怖い・・・・・・。
束の間訪れる沈黙が肌を刺す。俯く松岡の意に反して、城島はふむと唸ると、
「嫌や、帰らない」
「なっ・・・・・・」
「僕のものになってくれるまでは帰らない」
「馬鹿じゃないの・・・・・・」
「何が駄目なん。ぐっさんがまだ好きやから?忘れさせたるよそんなん、何年かかっても一生かかっても」
「ち、ちが・・・・・・」
「それとも、初めから僕なんか対象外っちゅう奴かいな?」
「・・・・・・」
「好きにさせたる、どんな手使ってでも。ぐっさん相手にどれだけ苦しんだ思ってるの」
「・・・・・・」
城島は項垂れる松岡を抱き締めた。抵抗されるかと思ったが、意外にも松岡は大人しかった。手をぎゅっと握りながら、もう片方の手を頭から背中に回し、ぽんぽんと優しく叩く。
「大丈夫、幸せにしたるよ。松岡を悲しい事で泣かせたないから」
「・・・・・・馬鹿」
城島の肩に顔を埋め、松岡がぽそっと呟く。力の抜けた身体が城島にしなだれかかり、手が服の端をきゅっと握っている。この時城島は、ドキッと愛しさに心臓が跳ね上がるのを感じた。
「付き合ってくれる?松岡」
「ん・・・・・・まだ、自分の気持ちが分かんない」
あと一押し、と城島が交際を申し込むも、松岡は首を縦に振ってくれない。正直なところそれが今の心境だろうなぁと城島も納得せざるを得ない。
しょうがない、と城島は提案を出す事にした。
「お試しで付き合うてみない?」
「?」
「何日か試しで恋人になってほしい。上手くいけばホンマに恋人になれるし、上手くいかなければキレイサッパリ、なかった事に」
「・・・・・・」
松岡が顔を曇らせる。城島自身もあまりこの手を使いたくなかったが、自分がどれだけ松岡を幸せにできるか見せるためだ、しのごの言っていられない。
「な、エエやん」
「・・・・・・分かった」
渋々、といった感じで松岡が頷く。よし、と城島は満足そうに微笑んだ。
これから松岡がどこへも逃げられへんよう、思う存分調教できる。
(逃がさへんよ・・・・・・)
まだ戸惑いがちの松岡を眺めながら、そう心に誓う城島だった。
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