勇者さんの旅路。

□アプファルート5
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朝より人で賑わう冒険者ストリートの、銀行前。

「オレ、金持ってるだけ」

「銀行とかよくわからないしな……」

「僕も」


「大人なんですから、学んだらどうですか」

アイの言う通りだとは思うんだけど、村にお金を預かってくれる大きな貯金箱なんて、無かったもんな。


「あら、貴方達。何してるんですの?」

銀行の前でぼーっとしていると、朝のお嬢様が現れた。


「ん?ビリビリするお姉さんが、いらっしゃいませんね」

「中で金」

短い言葉で説明するユキ。

まぁ、わからないことはない。


「え、ここに銀行あったんですか……」

「わざわざ走ってまで、別の銀行に行きましたもんね。泥棒みたいに」

「え、泥棒………?」


しかし、沢山の人で賑わう冒険者ストリートで、よく俺達を見つけたもんだ。


「私達はもうエルメナーム目指して、街を出るつもりでしたのよ」

「私達もパルテさんが戻ったら、出ますよ」

器用に杖をクルクル回すアイを見て、


「あ、貴方!武器持ってるんですね!?」

ケイトさんが、オレに迫ってきた……


「す、すみません。持ってます、近いです」

「あ、あぁ……失敬。少し見せてもらっても宜しいですか?」

「え、あーはい」

背中を向ける。


「この武器、軽くできますよ」

「マジで!?」





「うるせぇ」

ユキに怒られた。


いや、もう、嬉しくて嬉しくてだな。
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